2009年03月19日

サラッと書かれる怖いこと シャトル後計画の遅れと頭脳流出

NASA漂流 宙に浮く『シャトル後』計画


>しかし、アレスは予算不足やトラブル続きで開発が遅れ、シャトル計画終了から打ち上げまでに既に五年の空白が生じてしまった。この間にNASA技術者の頭脳流出が懸念されている。


この中で、一番重要なのはここだったりします。
シャトルがどうしようもないので引退させるのは、もうどうしようもありません。↓なんか参照。



問題は、アレス以下の後継開発が難航していること。まあ、シャトルのメインエンジンを使い回すとか、あからさまな弥縫策だったのでこうなるのも当然なのですが、そんなことを言っている場合ではありません。

ポイントとなるのは、「頭脳流出」の意味です。

普通に考えると、後継機を「開発」しているのだから、流出もなにもないだろう、と言う風に思われると思います。
しかし、打ち上げ関連技術者と開発者は別です。そして、打ち上げる物がない(衛星を上げるロケットは、バンバン上がっていますが)以上、打ち上げや再突入を担当する技術者を五年間遊ばせておく余裕は、NASAにありません。お決まりのレイオフ一直線です。

ところで、アメリカがソ連崩壊後国際宇宙ステーション(ISS)計画にロシアを引っ張り込んだのも、技術者引き留めのための「公共事業」でした。旧ソ連のロケット関連技術者を失業させ、「流出」させるわけに行かなかったからです。

どう言うことかというと、先日書いたとおり、人工衛星と弾道弾に本質的な差はありません。ロケット打ち上げ技術者の流出≒ミサイル技術の流出です。

しかも、シャトルの技術者というのがまた困ったところです。
弾道弾と人工衛星の違いは「落ちてくるかどうか」だと書きましたが、「落ちてくる」時の技術は実はとても難しいのです。
大気圏から離脱した物体が、再突入=再び大気圏に突っ込んでくる。この時、非常に複雑なエネルギーが物体にかかり、「狙ったところに落とす」のは容易ではありません。大雑把に言って、海の底に沈んでいる物に、空から石を投げつけるような状況を考えて下さい。
ちなみに、弾道弾は大気圏の上層を、水面を水切りして進む石のように進みますが、この技術も再突入の技術と関連します。

どれくらい難しいかというと、これだけロケットを打ち上げ、大体世界第四位(どこを見るかで変わるでしょうが)の技術力を持っている日本が、度々衛星の回収に失敗している事から想像してください。
日本はロケット技術と平行してミサイル開発をしていない希有な国なので、再突入技術は後回しになりがちだと言うのはありますが。

そして、日本の固体ロケット開発に危機感を抱いて液体ロケットの技術を気前よく与えてくれたアメリカも、この再突入関連技術は教えてくれなかったのです。秘中の秘ですね。

先日北朝鮮の「人工衛星」を散々馬鹿にしましたが、その前提にはこう言う事実もあったわけです。「北朝鮮ごときが、狙ったところに落とせるものか」と。(勿論、日本を狙うなら弾道弾など要りません。ですが、「日本を狙える」事に、全く意味はありません。アメリカ本土を射程に入れて・入れる可能性をちらつかせて初めて、外交カードになります)
再突入の際の僅かなズレは非常に大きな誤差を生むため、例えNBC兵器であってもこの技術が未熟なら脅威度はないも同然になります。(不正規戦で沿岸部の原発を襲われる方が、よっぽど怖いでしょう。敷地内に保管されている廃棄物をばらまくだけでも、「汚い爆弾」一丁上がりですから)

と言うわけで、「頭脳流出」は非常にマズイのです。
イランや北朝鮮やパキスタンにいかれるよりは、と言う感じで日本に技術者を押しつけてくれれば、僥倖なんですがねえ。(弾道弾の技術が欲しいという意味ではなくて。あんな金食い虫、政治的意味でも日本にとっては見合いません)これまた先日書いたとおり、有人月面探査とか無茶を言ってる時でもありますし。




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