2009年04月04日

どこまで続くぬかるみぞ 宇宙開発は、文科省から内閣府へ

今後の宇宙開発体制を決める基礎となる文書が公表された(松浦晋也のL/D)

そして、ここで触れられている資料がこちら

二つ上のリンク先エントリーにはリンクミスがあるようなので、この真上のリンクから見てもらうとよいと思います。
要するに、最低でもJAXAつまり宇宙開発の所管官庁は文科省から離れ、恐らく内閣府が担うことになるだろう、と言う話です。

内閣府は内閣総理大臣直属の機関ですから、政治の影響をもろに受けます。
しかし、宇宙開発は非常に長いスパンで行われる活動です。特にその研究分野は、一人の研究者が生涯をかけてほんの数段階のステップが踏めるかどうか、そんな気の長い世界なのです。
例えば、単純な人工衛星ですら、計画から実際の運用開始まで十年以上かかることは珍しくありません。

確かに、宇宙開発はプロパガンダと密接に結びついて来ましたが、我が国の場合そうではなかったのです。と言うか、そう言うところに金をかけていなかったために、地味ながら堅実な成果を上げてきたとも言えます。

ですから、例えば宇宙開発のプロパガンダ的側面を重視して、内閣府に新設機関を作って宣伝・啓発を担当させる、と言うような事であれば、まだ理解できなくもりません。

ですが、現在政治とはほとんど無関係に(正確に言うと、たまに政治が口を出すと、毎回ろくな事になっていません。「平和利用」と言う言葉に振り回されたり、逆に後述する「情報収集衛星」と言う安全保障名目に予算をかすめ取られたり)歩いてきた分野を無理矢理内閣府に移しても、上手くいくわけがありません。単純に、余計な業務は増えるわけですし。

例えば、日本はHシリーズのような、独力で静止軌道衛星を上げられるような技術力を持っています。(旧NASDA系)ひまわりが長年東アジア~西太平洋の気象情報をほぼ一手に引き受けてきたのは、こう言う技術があればこそです。

一方、これと並んで、科学的に大きな成果を上げている旧ISAS系の技術があります。(派手じゃないので一般マスコミにはスルーされがちですが)はやぶさ、ひので、ようこうと言った衛星の名は、聞いたことがあるのではないかと思います。
そしてこちらは極言すれば、大学・研究機関が自力でやって居ることです。勿論税金は投入されているわけですが、いわゆる国策として推進されてきたものではありません。

このため、あの許し難い情報収集衛星などと異なり、技術情報や成果は速やかに公開され、日本と世界の研究水準と引き上げることに資されています。

ちなみに、対局なのが例の情報収集衛星で、宇宙予算を大きく食いつぶしす一方で機能的には役立たずであり、しかもそれが機密情報で公開されないという三重苦になっています。
そして、この情報収集衛星こそ「政治主導」で、宇宙のことをわかりもしない(それこそ、偵察衛星というのが対象を常時監視できるできるものではない、と言う基本中の基本すら知らない)与党・官邸の肝いりでねじ込まれた案件なのです。

極端な話、情報収集衛星関連が内閣府に移って「政治主導」の名の通り内閣府の予算で運営されるようになる(そして、これらにかすめ取られた予算が帰ってくる)などという話なら、関係者は万歳三唱で喜ぶでしょう。
しかし、今回の提案は、結局の所日本の宇宙開発全体を情報収集衛星と同じ運命に、追いやることになりかねません。

ただでさえ、世界最大の固体ロケットM(ミュー)シリーズを生産中止にされ、その技術を受け継ぐ開発計画も認可されていません。
これ以上こんなことを続けられては、半世紀の歴史と独自の技術を持つ日本の宇宙開発は、技術力を失って骨抜きになってしまいます。

また、良く勘違いされている方が多いのですが、軍事技術は軍事技術だから他をリードするわけではありません。
優先的に金や人材が集中投入されるから、結果的に他をリードするのです。戦後の日本が良い例でしょう。戦前にはド貧乏国の手慰みレベルだった自動車産業があれほど発展するのに、「軍事」の名目は不要でした。

むしろ、軍事単体では商売にならないため、軍事・民生共通の技術を使って開発負荷を下げざるを得ず、両方の技術が乗り入れ可能と言う希有な状態になっている、と言う指摘がされたりします。(最初に見たのは、岩波講座日本通史の現代1か2収録の論文だったんですが、ネット上では収録論文リストが出てこないのでリンクを貼れず)

要するに、予算が変わらず軍事指定だけ付くとなれば、単に機密扱いされて情報の共有が出来なくなるだけ。何の得もありません。国内の科学および技術の発展には、マイナスにしかならないでしょう。

そもそも、そのような体制の中で発展してきた開発文化を叩き潰して、一体どのような体制を組むつもりなのでしょうか?
内閣府に、宇宙政策についてのノウハウがあるのでしょうか?一応旧科技庁から原子力政策などは引き継いでいますが、規模も意味もまるで違います。それとも、時折名前の挙がる経産省になら、何か凄いことが出来るのでしょうか?

結局「政治主導」などと言って、大学等の現場に余計な報告書作成を増やして終わるのではないか、と言う懸念は、決して的外れではないと思います。
すでに、低予算で世界有数の教育レベルを達成していた学校も、同様に先進国最低の負担で世界一の寿命を達成していた医療も、度重なる「改革」で滅茶苦茶にされてしまっているのですから。(少なくとも、これらの崩壊が「日教組」や「医師会」、いわんや「若者の心の闇」のせいでないのは確かですよね、自民党をぶっ壊してくれた皆さん?)

今回のこの事案、日本の宇宙開発に対する、システム面におけるとどめの一撃になりかねないと思います。
ただでさえひどい状態に追い込まれている日本の宇宙開発を、これ以上ひどくしないでもらいたい。「政治」に望むのは、本当にこれだけです。


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