2009年04月24日

終わりの始まり JAXA、内閣府所管確定

前回の記事の続報です。

「JAXA」内閣府に移管 宇宙開発 商業利用を加速(産経)

ナチュラルに皮肉な話ですが、カテゴリは「政治」。
商業利用を加速、ですか。文科省は意識不足、ですか……
まあ、後者は全くそのとおりだと思うので、何も言うことはないです。

ですが、こうおっしゃる以上、内閣府は、「政治」の皆様は、さぞ高い意識をお持ちなのでしょうね?

と思って(嘘です。そんな事を「思」うには、彼らの前科は多すぎます)記事を見ると……

> 河村建夫官房長官は22日、都内で講演し、「産業振興や安全保障などあらゆる面で宇宙開発の機能を強化するには文科省だけでは対応できない。国が責任を持ってやるには内閣府とJAXAが一体でやった方がよい」と述べ

>政府・与党内では「商業化の前提となるコスト削減や信頼性向上への意識に欠ける」などの批判があった。


上、逆に聞きましょう。科学探査や、すぐに産業化できるわけではない基礎研究・実験について、内閣府は対応できるのですか?
もっと具体的に言えば、現政権が、現内閣がある内に成果が上がる事があり得ない分野に、ゴーサインを出せるのですか?

下、意識以前に、何も知らないのはあなたたちの方です!

前回、「政治」が偵察衛星がどんなものかも理解せず、宇宙予算を情報収集衛星に突っ込んでドブに捨てた事を指摘しました。
そして、今度はお約束の「コスト」と「信頼性」です。

コスト:
国産ロケット(正確には、この段階ではまだ完全ではないですが)、H2の開発予算は予定2000億、最終2700億。これは、世界的に見て破格と言うか、アメリカの技術者曰く「クレイジー」な安さです。
ちなみに、同時期に開発された欧州のアリアンVが70億ユーロ。今ユーロは随分安いですが、一兆円を下らないと思って頂いて間違いないです。
なお、一機あたりのコストという物は生産数に左右されますから、他国(特にロシアあたり)と比較しても無意味です。そもそも、アメリカからの圧力で衛星市場を開放し、「平和利用」の縛りで仕事を減らし、量産が効かない体制を作ったのは「政治」です。

信頼性:
HIIは7機が打ち上げられ、1機が失敗、もう1機が不完全な軌道投入となりました。
HIIAは15機が打ち上げられ、失敗は1機のみです。
つまり、わずか20回程度しか運用していない機体で9割の成功率を出しているのです。そもそも、このレベルでは信頼性なんて誤差です。サンプル数20程度の「統計調査」など提出したら、鼻で笑われるのが普通です。

一方、世界で一番金をかけて安全策が取られ、124回の打上実績があるアメリカのスペースシャトルで、成功率は98%。
さっき出したアリアンVだと、39回で失敗2、部分成功2です。ちなみに、最初の22回で比較すると、全ての失敗がここに含まれるので、HIIの方が好成績になります。

事故というのは運用初期に集中するのが常識ですから、(改良もされていきますし)信頼性向上への意識に欠ける、などと言われる理由はないはずです。

そもそも、信頼性向上とはコストの上昇なのです。なんですか、「意識に欠ける」って?意識が低いからロケットが落ちるんですか?安全装置や二重防護策を講じれば、コストは上がるんです。コストと安全性はバーターなんです。


そして、記事のまとめがこちら。

> 内閣府への移管により、文科、経済産業など各省庁がバラバラに行ってきた宇宙関連政策を統合し、大規模かつ迅速な宇宙開発が可能となる。産業界の意見も反映しやすく、積極的な参入を促すこともできる。

産経が記事で政府の太鼓持ちをしているのは別にいつものことですが、「産業界の意見」とは何でしょう?「産業界の意見」をくんだ「政治主導」こそが、一連の「改革」が日本の各種制度を破壊していった元凶だったのですが、「反省」って言葉をご存じですか?「謝罪」とか「賠償」とまでは言いませんが。

そもそも、「産業」面を想定するなら、既に経産省が関わっているわけで、内閣府がしゃしゃり出てくる意味はありません。

そして、またぞろ「統合」ですか。まるで、同じ車だからと言う理由で、戦車の開発と国産車の振興を同じ省庁に任せるようなものです。

結局の所、また学ぶつもりもない素人が印象論で制度をいじり回ているとしか思えません。そして、事のついでに利権を確保しようとしている、と勘ぐりたくもなります。

> ただ、JAXAの予算は、21年度の宇宙関連予算3349億円のうち約6割(1918億円)を占めており、巨額な予算と権限を失うことになる文科省の抵抗も予想される。

などと書いてありますが、裏を返せばそれだけの予算と権限が「政治主導」に帰すると言うことでもあります。
何より、「統合」によって、科学探査も基礎研究も一緒くたに「機密」扱いでもされようものなら、税金を投入した成果の国民への還元も出来なくなります。

そして、そもそも内閣府は軌道要素のNORADによる公開も知らず、下記のデータをさらして世界の笑いものになった組織です。
この「羮」に懲りてなますを吹きまくるのは、今から十分予想できるでしょう。

前世紀末あたりから、多くの実績を積み重ねながら政治的・社会的には言われなき批判を繰り返されて後退してきた宇宙開発。これも、さらに悪くなるための第一歩となるのでしょう……

医療、教育、社会福祉……
低コストで多大な成果を上げてきた分野が葬られた墓場に、宇宙開発も並んで埋められる事になりそうです。
このままでは、復活を遂げるとしても一体いつになるのやら。


おまけ:

1 27698U 03009A 03088.51625000 .00004167 00000-0 16560-3 0 60 2 27698 97.3068 160.9810 0004807 350.2821 199.8390 15.25837605 227
1 27703U 03009F 03088.51733796 -.00002872 00000-0 -11374-3 0 60 2 27703 97.3048 160.9778 0002692 264.9578 284.9437 15.24629705 211

↑情報収集衛星の「軍事機密」こと軌道要素。
ネット上に普通に転がっていますし、衛星ウォッチャーの間では常識なのでそのまま表示。

人工衛星を「見る」ことに興味のある方は、この辺をどうぞ。




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