2009年05月12日

タチの悪い箱物 文化庁、国立サブカル拠点建設へ

文化庁、国立サブカル拠点建設へ 年度内にも着工


文化庁という組織は、どうしようもないことで有名な旧文部省系の中でも、輪をかけてろくな事をしないところです。
例えば、「文化振興」の名の下に彼らが運営している各種著作権関連小委員会fが典型ですね。露骨に偏った委員の選出と強引な議論誘導で、「権利者」ならぬ既得権者偏重の施策を連発しています。

ですから、これも期待できないよなあ、と思いつつ内容を読んでみると……


>2009年度補正予算案に事業費117億円を計上しており、2、3年以内の開館を目指して年度内にも着工。文化庁は東京・秋葉原などに並ぶサブカルチャーの拠点を整備することで、関連産業の育成や外国人観光客の増加につなげたい考えだ。

箱物です。いっそ、清々しいほど箱物です。

以下本論

国の機関で展示を行う以上、当然、そこには厳しい選別がかけられます。
例えば、たびたびネガティブな話題になる性描写や暴力表現のある作品などは、弾かれることは間違いないわけです。そんな物を展示したら、マスコミと議会に袋だたきにされるのは見えているわけですから。

となると、結局この施設は、”明るく楽しく健全”な、任天堂のゲームや手塚治虫の漫画(勿論、アングラ臭満載のマイナー作品は除去)を並べた無難な物にしかならないでしょう。

生まれては消えるアニメ会社から一次資料を買い集め、倉庫で朽ちかかるフィルムをサルベージし、特別法を作ってコピーを取って(古いフィルムは権利が錯綜し、複製に必要な「権利者の許可」が得られず朽ちるに任せざるを得ないことが多い)保存に努める……
そんな、気合の入った施設を作るだけの覚悟が文化庁あるとは、とても思えませんし、報道からも見えてきません。研究のケの字もありませんしね。

そして、そんな施設に、一体何の価値があるのでしょうか?
アーカイブであれば、前に取り上げた、明治大学による同人誌を大量に収蔵する記念館に補助金を出した方が、百倍有効です。

それ系に造詣の深い人間がレアな物品をみたいのなら、秋葉原巡りをした方が、遙かに充実した品物を見ることができるでしょう。

そもそも、「サブカルチャー」の拠点を国が整備するなど、悪い冗談としか思えません。
サブカルチャーのサブカルチャーたるゆえんは、メインカルチャー、つまり体制や社会、倫理常識に対する反発です。お行儀良く、政府や「文化的」権威から誉められるような物は、メインカルチャーに任せておけばいいのです。

また、大前提として、「関連産業の育成」には、お金や手間をかける余地がまだまだ沢山あります。
先頃公正取引委員会が発表した実態調査報告にあるように、産業構造はいびつで現場の搾取によって成り立っており、とてもマトモな状態ではありません。

行政なら行政らしく、法律を掲げて利害調整者(と言うか、あれは単純な搾取ですから、遵法徹底というレベルでしょうが)の役割を果たすべきでしょう。

秋葉原と並ぶ拠点、などと言いますが、秋葉原自体、目のカタキにされることが多く、歩行者天国廃止に見るように拠点能力をどんどん削がれている状態です。

文化庁が本当に文化振興をしたいのであれば、やれることは色々あります。厚労省と連携、あるいは働きかけてのアニメーターの労働環境改善や、秋葉原への経済特区設定、単純な広報素材などの発注量増加(公共事業)……
土建業界に117億円を落とす前に、ストレートに効果を出す道などいくらでもあるのです。(土建業を潤す公共事業は結構ですが、それはそう言う目的の予算でやるべき事です)

そうでなければ、箱物と関連団体のポスト(天下り先)をセットで手に入れる省益誘導政策と言われても、反論できないでしょう。

大体、アニメ関連の常設展示については、何かと批判の多い国立新美術館(これも、まず箱物ありきのひどい施設です)が取り組んでいくのではなかったのですか?

勿論、こう言う組織・建物を造れば、学芸員の採用や研究発表の場の提供など、研究を下支えする環境を整えられるという側面はあるかも知れません。
しかし、それが目的であれば、関連研究分野に直接予算を投下し、国会図書館等の分室でも小規模に作った方が高効率なのは、言うまでもないでしょう。117億もかけた立てた箱の維持コストで、年に何人の常勤職員が雇えるか!

小泉改革以来、大学の研究予算は削られ続けているのですから。
誰でしたっけねえ?「米俵百俵」とか仰っていた人は?

種子島宇宙センターの、子供だましの展示とブラックジョークにしか見えない説明文に彩られた悲惨さを見るにつけ、ろくな物にならないと断言してしまって構わないはずです。
同じお台場の、科学未来館館でもいいですが。

繰り返しますが、私は、前にも書いたとおり、アーカイブはいくらあっても足りないくらいだと思いますし、体系的な研究機関も必要だと思います。しかし、それはお台場に117億で建物を建てて観光客を呼んで…… などと言う所から出てくる話ではないわけです。

ここから軌道修正して漫画版の国会図書館を作ると言う話になるなら、諸手を挙げて大歓迎したい所ですが……

そもそも、日本は残念ながら、「児童ポルノ」の判決を受けた本(正規出版物)を、国会図書館で閲覧停止にしてしまうような国です。(一体国民は、どうやってその判決が妥当だったかを判断するのでしょう?チャタレイ判例が言うように、その判断は常に流動すると言うのに)

例えば↓の本に出てくるような、様々な社会と関わる問題を背負って、倫理や法の境界線上でダンスを踊るサブカルチャー作品を扱えるとは、とても思えません。
文化庁は文化財の目録管理だけやって居てくれるのが、一番国民に害が少ないのではないかと思います。

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この記事へのコメント
国立国会図書館は、漫画含め、出版された全ての書籍を保存する場所ですが、あと数年でパンクします。
漫画だけでも移動してそれ専門の収集場所を作ろうというのが、計画理由の一部です。
そして、国立国会図書館分署となるはずでした。
ちなみに、国立国会図書館法によって、出版社は出版書籍を全てタダで提出納入義務があります。

以上を踏まえて、ご意見をお願いします。
Posted by てんも at 2009年12月08日 12:27
分署計画が最初からあったなら、それこそ単品で粛々と予算申請すれば良いだけです。収蔵図書館と展示施設を一緒にしようという発想が、まずおかしいですし、変な相乗りをさせれば本来の図書館予算を圧迫します。
漫画原稿や、サブカルチャーとして無視できないフィルムや各種記録メディアの網羅的収蔵をするならば、国会図書館法の解釈変更が必要でしょうし。

また、施設パンクが主問題ならば、以後の施設拡張が困難なお台場は、なおさら向いていない事になります。

あと、提出納入義務が全く守られないのは有名な話ですよね。(ちなみに、無料ではなく、一定額の請求ができます。通常定価の5割とか聞いた事がありますが、具体的な率は不明確)自称「文化の担い手」の出版社に義務履行徹底を促すのは、いの一番に必要な改革じゃないかと思います。
Posted by snow-windsnow-wind at 2009年12月08日 18:41
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