2009年05月13日

どの辺が現実的な妥協点か 「性暴力ゲーム」問題

この前の、「性暴力ゲーム」に関するエントリーと関連する話題です。

上手く言えなかった部分について、非常に解りやすくまとめられている所があったので、リンクを貼ります。なお、二次元至上主義さん経由です。

実際に性犯罪が増えるか減るかは(あまり)問題じゃないんだってば(Chambre Resonnante)
結局、効果をどうやって測定する<かの問題になりそうだ (同上)


私も、↑で言及されている「偏見のスパイラル」とでも言うべきものは、懸念されてしかるべきかなあとは思うわけです。

例えば、人種的な偏見、つまりヘイトスピーチなどは、おおっぴらに振りまかれることで社会の認識を動かしてしまう部分があります。

だからこそ、ドイツを筆頭に(過去の教訓から)これを言論の自由の外に置き、あるいは一部例外的な制限を設ける国は存在するわけです。

その意味で、偏見のスパイラルを招くような言説・表現に批判が寄せられるのは、健全な事では無いかと思います。
バイオ5のエントリーでも書きましたが、誰かを傷つけたり偏見を煽る表現をすれば、反発と批判を受けるのは当然。むしろ、そうなってしかるべきでしょう。

ですから、前にも書いたとおり、私はあの団体の意見を「理解」します。

ですが、ここで問題となるのは、それを法規制の対象とするかどうかと言うことです。

以下詳論。

一般に親ナチス言論が規制されている、と理解されているドイツにおいても、運用はかなり厳格で、例えばナチスを善玉にした小説で逮捕されることなどありません。
そもそも、現在色々なところで見る事の出来るナチスの残したアーカイブは、ナチス自身によるナチスを賛美し、正当化する物なのですから。

例えばこれ。(↓)本当に、滅茶苦茶格好良くて鳥肌が立つんですよ。恐ろしいことに。

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結局この問題は、社会的な非難・善悪の問題と、現実の法規制や言論・表現の制限が同じ次元で論じられている点が、問題なのだろうと思います。


もう繰り返しませんが、法規制というのは法の支配する国(よく使われる「法治国家」は悪い意味なので注意)において非常に強力で、副作用の大きいものです。それを行うに値するほどの影響、強力なスパイラルがあるかと言えば、それは疑問符が多すぎて話になりません。

殺人でもレイプでも、創作物のネタに使われるのは、それが「悪い」「衝撃的」な事だからです。
現実ではできない・やってはいけない事だからこそ、ワクワクドキドキして楽しめるわけです。

例えば、私は「妹物」は大好きですが、「義理」は許せません。
禁忌の対象だから面白い(萌える・燃える)のであって、タブーに抵触しないなら、それはただの恋愛ものでしかありません。つまり、オチで「義理」を持ってこられた瞬間に、銃撃戦の起きない西部劇や、日本が沈まない日本沈没くらい意味のない物になるわけです。

それが「本来許されないこと」であるという認識を前提に楽しむわけですから、そこから例えば「妹を性的対象として見て良いんだ」というメッセージを受け取る人間は、まず居ないでしょう。

また、「悪い事」を楽しむという意味では、逆の例を考えてみると面白いかも知れません。
例えば、歴史シミュレーションに「ゲームで学ぼう!」とかキャッチフレーズを付け、文科省の推薦文でも載せて見るとどうなるでしょう?多分、親による購入数は増えても、喜んでパッケージを開く人間は激減するでしょう。

文部省(当時)の外郭団体から推薦を受けて玉砕したパネキットという前例もありますから、無根拠ではありません。(って、今になってプレミア付いてる!?)

18禁ゲームが女性を物のように扱うのも、加虐願望を振り回して見せるのも、それが「悪いこと」であるという前提があればこその筈です。

この意味では、一般のテレビ番組で「悪いこと」という前提を提示せずにタレントいじめを垂れ流す方が、遙かに悪い影響があるだろうと思います。

昔、アクティブだったころのちゆ12歳さんが、書いた事もありますが、(ここ。もう7年も前ですか……)それが「悪い事」だという前提がある場合、表現は人の禁忌を解除したりしない訳です。


また、内容以外の部分でも、あの手の18禁ゲームをやる人間は、そこに描写される諸々の禁忌や犯罪が、「悪い事」であるという前提を叩き込まれながらプレイすることになります。
それこそ、購入場所は隔離され、あるいは成年である事の確認を経、ゲームを起動すれば、真似するな云々の注意書や「この登場人物は18歳以上」と言う文書を読まされるわけです。
これらの注意書は一種のギャグと取られることも多いですが、実は非常に効果が大きいと思います。

何しろ、プレイする度に「現実ではこうは行かないんだぞ」「リアルで18歳未満はやばいんだぞ」と言う、社会からのメッセージ(あれは、業界団体の定めるテンプレートに沿っています)を突きつけられることになるのですから。

この点、漠然とした女性イメージなどよりも、遙かに強力にプレーヤーを「教育」し続けるわけで、過小評価すべきではないと思います。

従って、関連団体や販売サイトは、あれに準じる注記、例えば

「現実において当ゲームが拠って立つ女性蔑視的価値観を取ることは、あなたの社会的地位を著しく損ねる可能性があります」

と言った物を入れる、と言った表現内容を直接規制しない「対策」を提示することが、有効かつ妥当な妥協点となるのではないでしょうか?

表現に実害が及ばない範囲であれば、彼らの懸念に配慮し、譲歩して見せるのは悪い事ではないと思います。

繰り返しますが、私はああいう団体が規制を求め、我々オタクと関連業界を非難し、懸念を表明して抗議行動を行うことを「理解」し、自由に行われて然るべきと考えます。
しかし、彼らが主張する規制には全く賛成できませんし、正当性も無いものと考えます。

もっとシンプルに言えば、こう言うことです。
「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る。
 だから、あなたもあなたと異なる意見を主張する権利は、命をかけて守って下さい」

この場合「主張」は、「表現」と同じ意味になる事に気づいてもらえると、なお良いです。

表現規制関連のエントリーはこちら



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