2009年05月19日

米国を見習おう! 少女の過激水着DVD アマゾンが販売自粛

アマゾンが販売自粛 少女の過激水着DVD

要するに、前々から色々な所で過激過激と言われ続けていたジュニアアイドルのDVDを、人権団体が問題視して販売自粛要請し、AMAZONが応じたと言う内容。

まあ、こんな感じのビデオ群の事です。

エロゲー・エロ漫画と違って「被害者」が明確に存在するため、人権団体が突っ込みを入れる事にはかなり賛同も得られるのではないかと思います。

また、AMAZONは営利企業ですから、イメージを考えてこれに応じるのも理解できる所。

勿論、いまやこの手の商材の流通で第一の大手であるAMAZONが簡単に「自主規制」に応じるのは、余りに無責任だろうとも思うのですが。

なお私、あの手の映像は見た事がありますが(you tube 辺りに行けば、普通に転がっています)正直な感想は「これをポルノと思うのは、そう言うものをポルノと思う者だけではないか」でした。

例えば、海水浴場の風景を映像におさめた時、若い男性のビキニパンツはその筋の方にはかぶりつきたくなるものかも知れませんが、我々にはただの風景ですよね。それを、欲情する人間がいるから「猥褻」だとか言われたら、正直困ってしまうわけです。

それと同じで、言うほど「過激」とは思えませんでした。

水着姿にせよパンチラにせよバナナを食べる姿にせよ、「それがわいせつなのではなく、見る者の心がわいせつ」としか言いようがないように思うのです。完璧な性行為が映っているのでもない限り、法が出てくるべきでは無いだろう、と。


さて、例によって引っかかるのは報道のされ方でして……

問題は、「児童ポルノ」と「米国の基準」です。

まず、前者。
報道によると、(当の団体のWEBページでも同じ内容)8~17歳の出演者の作品について要請を行ったとの事。
で、何度も繰り返しますが、17歳を「児童」と言うのは、悪質なレトリックですよね。
まあ逆に、8歳とかの水着姿って「猥褻」なのかと、「性的」なのかという突っ込みを、激しく入れたい気分にもなるのですが。(勿論、子どもは力関係的に拒否できませんから、ある程度「これ以上やらせてはいけない」と言う線引きは必要なのですが)

そして、大問題が、後者。
何だか簡単に「日本よりも児童ポルノの規定が厳格とされる米国の判例」などと言っていますが、じゃあ実際にその判例を見てみましょう。

ここが良くまとまっていますから、読んで見て下さい。
内容は、たびたび取り上げているヴァーチャル児童ポルノの連邦最高裁判決の解説ですが、非常に重要な「判例」が示されています。


なお、引用中にたびたび出てくる「ファーバー判決」とは、1982年の「ニューヨーク州対ファーバー事件」(New York v. Ferber, 458 U.S. 747  向こうの裁判は、被告と原告を並べて○○対××、と表現する。従って、行政訴訟は全てVSの一方が国や州)。児童ポルノ規制を合憲としたランドマーク判例です。
ただし、このニューヨーク州法で違法とされた「児童ポルノ」規制は、「16歳未満の児童による性的行為を描いた制作物の販売」の禁止だった事に注意しましょう。

……あれ、16歳?と思いませんでしたか?そう、「18歳未満」は自明の理ではありません。既判力を持つ重要な最高裁判例ですが、この時点での容認は16歳未満の規制なんですね。

さて、引用しながら見ていきましょう。

>ファーバー判決で禁止された作品は、それ自体が児童に対する性的搾取(sexual abuse)の記録

まず判決は、1982年の上記判例の確認から入ります。最高裁が明確な判例変更を行わない限り、以前の基準は法と同等に扱われるからです。つまりこの部分は、政府に対する「お前ら、俺らの判例ちゃんと把握してる?」と言うダメ出しですね。

そして、確認内容。規制対象となっているのは、あくまでも "sexual abuse"つまり、「性的虐待」です。abuseと言う言葉は、非常に強いニュアンスの単語です。水着姿を保護者同意の上で撮影するのは虐待ですか?バナナを食べている所を撮影するのは?


>政府は、児童ポルノが価値ある表現であることはまれなので、因果関係は間接的でもよい、と主張する。しかし、ファーバー判決は、児童ポルノの内容を問題にしているのではなく、その制作方法自体を問題にしているのであり、また、児童ポルノそのものには価値がない、としているわけでもない。

問われているのは制作方法です。制作方法が"abuse"かどうかが問題なのです。
勿論、直接的な性行為はそれ自体が"abuse"ですが、件のビデオは、子どもを脅しつけて水着を着せたのでしょうか?殴りつけて短いスカートをはかせたのでしょうか?

後段は、不思議の国のアリス辺りを想像してもらえればいいでしょう。ロミオとジュリエットでも、14歳と13歳のベッドシーンがありましたね。
ヴィクトリア調時代の少女写真、残された絵画・人物画。これから出てくるかもしれない、「児童ポルノ」性を含んだ未来の作品。それらを規制する恐れがある以上、無原則な否定はできないよ(当たり前の表現の自由尊重の法理が出てくるよ)と言っているわけです。
どこかのボンクラ二世議員の言った理屈が、どれだけ無茶か解りますね。


>表現を、それが持つ単なる傾向だけで禁止することは出来ないし、それによっていつか違法行為が行われるであろう可能性が高まる、というだけで禁止することもできない。

はい、そしてこれが結論部分。非常に重要です。
児童ポルノは、作成過程が "abuse" だから禁止されるのです。犯罪を誘発するから、ではありません。そもそも、判決の別の部分で指摘されていますが、犯罪を誘発するという根拠を、政府は提示できませんでした。早い話が、根拠なんかないじゃないか、と最高裁に断じられているわけです。

とにかく、最初の部分を熟読して下さい。
表現は、その傾向だけで禁止する事はできない。これが、アメリカの最高裁判例が拠って立つ大前提です。


>政府は、ヴァーチャルな児童ポルノが流通すれば、実際の児童ポルノの制作者を訴追することが困難になる、と主張する。この主張に従えば、結局「憲法によって保護されない表現を禁止するために、憲法に保護される表現を禁止する」ということになるが、そのようなばかげたことはない。

最後。今回の件とは直接絡みませんが、こここそがこの判例で一番重要な点でしょう。
憲法が、憲法に保護される自由を守るのは当然、至上命題です。憲法の保護下にないものを攻撃するために、憲法に保護される自由(憲法の存在意義)を掘り崩すなど、そんな馬鹿な事があるものか、と言う事です。


以上のように、アメリカの「日本よりも児童ポルノの規定が厳格とされる米国の判例を基準」にした場合、今回自主規制されたビデオは、普通にスルーされる可能性が高いものであると言う事を、理解して下さい。

自主規制されたビデオの内容に、眉をひそめる部分が多いのは確かですが、それは「米国の判例を基準」に照らして明らかに違法、と言うわけではありません。

とにかく、アメリカ最高裁の判例はおおむね、何よりもまず「規制に対して『厳格』」なのです。
少しでも政治が絡むとあっという間に尻尾を巻き、行政訴訟で原告が一部でも勝訴を勝ち取ればニュースになる、どこかの国の看板だけ独立機関とは違います。

恐らくこう言う突っ込みを入れると、団体の方は下級審では云々と言い出すでしょう。
ですが、アメリカは連邦制であり、stateとは独自の立法権と司法権を持つ独立国家です。法律など州によって全く違いますし、下級審判決の多様というか未統一ぶりも、小さな極東の島国とは比べものになりません。
厳しい判例を探せばいくらでも、緩いのを探せばもっと、それが下級審の判例と言うものです。

自分たちの道徳・倫理観に照らして自主規制が妥当だと思うなら、そう言えばいいのです。そのように、訴えればよいのです。
この件に関しては私も、仮想と違い明確な「被害者」が存在し得る以上、一定の規制は当然だと思います。(既に、無意味に広範な規制対象を持つ児童ポルノ法が存在し、摘発事例もある以上、これ以上法規制の枠を拡大する意味があるかは甚だ疑問ですが)

ですが、お願いですから、自分の都合に合わせて米国の「判例」と言う権威を持ち出すのは、本当にやめてくれませんか?

米国最高裁は、あなた方の「道徳観念」を正当化してくれる、便利な権威付け機関ではありません。
それどころか、一部の道徳観念や利益・宗教観が国全体を巻き込まないための番人が、司法という物です。

私は、欠点は多々あれ、あのサラダボウル国家をまとめ上げている司法制度には、尊敬の念を禁じ得ないのですから。


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