2009年06月05日

追悼・栗本薫

下らない騒ぎのせいで、きちんと書く暇が取れませんでしたが、5/26に栗本薫が膵臓がんで死亡しました。

敬称は付けません。あそこまで、私を失望させた作家はいませんでした。死んだからと言って手の平を返して死亡記事を敬称で書くのは、不誠実と言うものでしょう。


ですが、同時に、私の本好きを決定づけた作家の一人として、初期グイン・サーガの作者である栗本薫女史を偲び、心から感謝を捧げたいと思います。

ありがとうございました。あなたは、私に物語を読み、その世界を見聞する楽しみを示してくれました。
才能という物が摩耗してしまうと言う悲しい事実も余す所なく示してくれましたが、それもまた今では思い出です。


私は、あなたが描いた怪物うろつく荒野が、銀の鎧の聖騎士が、北の大国の黒い軍馬と新興国家の赤い騎兵団が、世界に眠るオーバーテクノロジーと人間に干渉する神々が、魔の法に従う青年が、豹頭の戦士が、勇気ある少女と陽気な傭兵が、海を征く帆船艦隊と謎の島々が、日本の指輪物語になれたかもしれなかった素晴らしいヒロイックファンタジーが、本当に大好きでした。

過去完了形で語らねばならないのが悲しくてなりませんが、それでもなお、あの二十冊あまりの文庫本は、死ぬまで所有し続けると思います。


 君は我が剣の王にして唯一の主君なり
 我が忠誠を試さん時はその御手にて
 いつなりとも我が胸を突き給え
 我が生命は君に奉りしものにして
 君が為死するは我が心よりの喜びなれば
 出で 君我が剣の主たるを肯んじ給わば
 いざ我が剣を受け給え



序盤の作品内で印象的に使われるモチーフ、「剣の誓い」。これを「紅の傭兵」イシュトヴァーンが、「双子の真珠」の姉・リンダ姫に向かって行うシーンは、序盤屈指の名シーンでした。
物語はこの後、このカップルを押しつぶす運命と軌を一にして、迷走していくのですが……

こう言った序盤のつかみがあればこそ、多くの人の心に残り、だ☆めーづさんが言うように、不動のプレゼンスを確立できたのでしょう。

草原の風雲児―グイン・サーガ(11)
草原の風雲児―グイン・サーガ(11)

この巻の「蜃気楼の恋歌」に、上記のシーンは収録されています。
本シリーズ未読の方は、序盤の物語が一段落する19巻辺りまでは、読んで見て悪い事はないと思います。序盤は本当に、力溢れる名作ですから。



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