2015年07月10日

これはダメな映画では? 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想

Mad Max

↑なんか、原作というか前日譚のアメコミがあるんです?



少ない時間をやりくりしまして、何とか娯楽の摂取を続けているのですが、今回見事に眉根に皺の寄る作品に当たったので、感想を書いておこうと思います。
この作品、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(原題 "MAD MAX FURY ROAD")は、非常に有名なバイオレンス映画、マッドマックスの最新作です。まあ、みんな大好き北斗の拳やFALLOUTシリーズの元ネタで有名なのですが、何せ古すぎて古参のオタク・ファン以外からは忘れられかけていた代物。
私も、1は小学生の頃見て余りのバイオレンスっぷりに泣き出しそうになった憶えがありますが、2の記憶は曖昧。3以外はファン的にもなかったことになってるらしいので見てません。

とは言え、断片映像や引用はあちこちで見る名作で、予告編がちょっと微妙な臭いだったことは置いておいて、頑張ってみてきた訳です。そして、うーんとうなりながら映画館を後にし、ネットの感想など見て回って今度は空を仰ぐパターンになりました。

と言う訳で、とりあえず最初に結論:
お金はかかっているし、観客の見たかった物を詰め込んだ超大作。しかし、本来添え物のシナリオを悪い意味で軽視しすぎて、一本の映画として非常に問題がある。

長いですね。でも、予防線を張る意味がありまして、はっきり言って絶賛してる人達の気持ちはよく解るのです。つまらなかったのは確かなのですが、「残念な事に」と言いたいほど「凄い」映画ではありましたから。個人的にも、こんなに疲れてなければもう少し楽しめたかもな、と思う部分はありますし。ただまあ感想は感想なので、以下正直に書き連ねていきたいと思います。


まず、冒頭が冗長すぎます。必要なシーンだけで構成された非常にストイックな構成、みたいな評価をあちこちで見るのですが、これ嘘です。
確かに、開始2分でカーチェイスが始まる辺りは凄いのですが、そこから主人公が自由になって逃走劇が本格的に幕を開けるまでの数十分は、はっきり言って無駄です。砦の中の様子を見せるとか、基本的な状況を説明するとか色々あるのですが、そこに主人公は出てこないので、あんな構成にする理由は特にありません。砦内の状況や設定を見せるなら、別にイモータンジョーの視点で良いですし(実際半分以上はそうです)、縛り付けられているだけの主人公を横目に、誰だか解らない悪党(フェリオサ)と別の悪党(ジョー)がやり合っているのを見せられても盛り上がりません。話としては回り道その物です。
美女連れて逃げてるモヒカン(じゃないけど)姉ちゃんと主人公が合流、で始めてしまった方がスマートだったはずです。

この無意味なシーンという問題は実は最後まで続き、最終的に「逃げ出した場所に戻る」と言う、前半の苦労を無にする方向でシナリオが終わるので、見ていて徒労感が強くなります。要はカーチェイスバイオレンス映画なので、お話の中身は空っぽで構わないのですが、それは「何も考えずに見ていられるシナリオ」が必要という意味であって、シナリオラインが適当で良いと言う意味ではないはずです。

とは言え、多分バイオレンスさえ見られればいいと言う意見は絶対来ると思います。個人的には、過去の名作のカーチェイスシーンだけ集めて映画館で流したら、どれだけひどい「映画」になるかを考えて欲しい所なのですが……

しかし、この映画の最大の問題点は、そのカーチェイスが「頑張りすぎて冗長」にも関わらず「物足りない」と言う、一見矛盾する問題を孕んでいる所です。

順に説明します。

まず、冗長の部分。この映画、冒頭からほぼ全てがカーチェイスです。しかも困ったことに、全てのカーチェイスシーンが全力で演出されており、結果メリハリがありません!冒頭のハリネズミ車や砂嵐と最終決戦は同じテンション(最高潮)で、「最初以上」に盛り上がりようがないのです。
また、本当にずっとカーチェイスで、カーチェイス以外のシーンもほぼ数カットで終わり、しかも悪い意味で緊張感が持続するため、視聴者の体力はどんどん奪われていきます。「疲れた」と言う感想がやたらと聞かれるのはこのためでしょう。もっと簡単にいうと、シナリオにも画面構成にも起伏がないのです。
さらに言うと、カーチェイスの連続なのに、目先を変える工夫に乏しく、ひたすら砂漠を背景に「追いすがる敵車をウォータンクの運転席から迎撃」と言うパターンが続きます。背景が同じなので地形を使った戦闘ギミックはほぼなく、味方がウォータンク一両なので毎度同じ戦闘になってしまっています。最終戦闘で、バイクとの連携がある前半は面白いのですが、バイクが倒されると途端に元通り。棒飛び部隊は一見面白いのですが、結局「併走する敵車からの乗り移り攻撃」と言うパターン類型なので、すぐに飽きてしまいます。滅茶苦茶格好良くて最高に馬鹿で、見ているだけで楽しいスピーカートレーラーも、戦闘にいる意味は本当にないので、カーチェイスの戦闘ギミックとしては画面の添え物でしかないのが残念至極。(戦闘において役目を持たないので、倒した時の爽快感がありません)
そうそう。「敵の中央を突破して砦を目指す」と言う後半のシチュエーションにオ!?と身を乗り出したのですが、何故か敵は左右に展開しており、普通にまた「主人公達を追っかける敵集団」になってしまったのはなんなんでしょうね?数カットで終わったとしても、「高速ですれ違う車両群」は、絶対絵になったはずなのですが。あの、何の面白みもないウォータンクに、巨大質量(=衝突の破壊力)と言う意味を持たせる事も出来たでしょうに……
閑話休題、特に地形については、それこそ北斗の拳冒頭の廃ビルを使ったカーチェイスや、文明の遺物を遮蔽物に使った戦闘を楽しみにしていただけに、全くもって肩すかしでした。と言うか、背景美術はSF映画の華なわけで、そっちにも少し予算を回してよという感じです。

次に「物足りない」の部分。上記のように、シチュエーションがどの戦闘も同じなので、画面に出て来る面白車両がギミックを十分に活かすことなく消えていきます。また、金をかけて大量の面白車両を揃えてしまったが為に、一両当たりの出番があっという間に終わります。結果、面白い車両やキャラが大量に画面に映るのに、どうにも印象が薄くなってしまいます。乳首男爵とかイモータンジョーとか、作中やってるのは車の運転(しかも他と差別化できてない)ですしね。逆に面白くもないウォータンクは出ずっぱりなので、敵の車を奪いながらとか、そう言う展開にした方が良かったんじゃないか思ったりします。
なんか例によってフェニミズム絡みでなんだかんだ言われてる美女軍団にしても、ずっと後部席に座ってるだけでいる意味が無いのが本当に困った所。あれだけ巨大なウォータンクで、何故彼女たちも配置について戦わないのか?(あ、男女の役割だの比喩的な意図とかどうでも良いです。後部席に座ってるだけの姉ちゃん達にシナリオ上の面白みがあるわけないだろ、と言うだけの話です)実際、後半参加のばあちゃん軍団は戦闘に参加することでキャラを立ててるわけですし、画面の華なら華として、おっぱいの一つも出しながら銃とか撃ってもらわないと、馬鹿映画にいる意味がありません。
一事が万事この調子で、単純に色々詰め込みすぎて、どれもこれもかけた金や労力ほどの効果を上げ切れていないのです。

と言う訳で、最初に書いたとおり、お金も労力も大量にかかっていますし、間違ってもゴミ映画ではないのですが、全体の構成や一本の映画としては失敗作と言っても良いのではないかと思います。何というか、全員4番で打線を組んでも強いとは限らないとか、戦車だけで部隊を組んでも歩兵の餌食とか、そう言う諸々が頭に浮かびました。

町山智浩は、観客が好きなカーチェイスを全編通してやっちゃったと言う様な事を言っていますが、それは結局ロボットの戦闘シーンだけで構成されたロボットものとか、エロシーンだけで構成されたエロゲーとか、そういう意味なのではないか、と思ったり。実際、そこで想像されるのと同様の疲労感を感じる羽目になりましたし。

と言うわけで、1ヶ月経たずに更新することができましたが、こんな内容になってしまいました。次は是非、楽しかった作品の紹介で更新したい物です。


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