2009年06月19日

引き続きライトSF 『タイムスコップ』 感想

タイム・スコップ! (一迅社文庫 す 2-1)
タイム・スコップ! (一迅社文庫 す 2-1)

前回に引き続き一迅社文庫。菅沼誠也の「タイム・スコップ!」です。

理由は解らないが時間移動能力を身につけてしまったラノベ的お気楽女子高生と、特異点として唯一その影響を受けない幼馴染の、歴史改変SFです。

題名は、スコップで土木工事をするノリでタイムトンネルを掘り、歴史を変えてしまうと言う設定から来ています。ただ、リンク先のAMAZONの評価にあるように、「スコップ」を設定として使い切れていません。実は、別にスコップがなくても移動能力は使えるので。

ただし、同じレビュー内にある文章については、特に気にはなりませんでした。余り自己主張している物でもないですし、良くも悪くも印象に残らない感じかと。ライトノベルとしては、ある意味理想ではないでしょうか。

内容は、表紙からもわかるとおり割とお気楽なノリで時間を飛び、歴史が書き換わってしまって頭を抱える、と言うラノベらしい物。ですが、いきなり第二話で史実ではあり得ない世界に飛ぶ辺り、単なる時間移動ではないことを臭わせます。

また、時間改変物の宿命である「発生したオルタナティブヒストリーを元に戻すことは、発生した時空のジェノサイドに他ならない」と言う部分に、きちんと向き合っているのは重要なポイント。SFとしてきちんと筋を通していて、思わず頷いてしまいました。

涼宮ハルヒの消失で、この点について完全に無自覚なキョンに突っ込みたくなった人間には、こちらの方が納得して楽しめます。(勿論、「涼宮ハルヒの消失」は、そう言った欠点を越えて十分に面白い作品なのですが)

そして、最終話の非常に重要な場面で、幼馴染が特異点としての決意表明を行う辺りは、割と痛いのですが、上手くオチを付けて軟着陸させた所が好感度大。あのまま、彼の自己陶酔を主軸にシナリオを進められたらどうしようかと思いました。


それにしても、「歴史改変の結果、全体主義化した日本ではエロゲーが全面禁止されており、エロ本も空前の灯火。それは許せないのでオタクの幼馴染が奮起して再改変を目指す」と言うネタが、冗談に見えない状況って、本当に笑えませんね。
勿論、このネタは有名なブラッドベリの「雷のような音」(「太陽の黄金の林檎」収録)の、パロディなわけですが。


とりあえず、前回も書いたとおり、一迅社はSFで結構良い作品を出してくれてて嬉しいですね。



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