2009年07月09日

できの良い部活物 『ロウきゅーぶ!』 感想

ロウきゅーぶ! (電撃文庫)ロウきゅーぶ!〈2〉 (電撃文庫)
ロウきゅーぶ!ロウきゅーぶ! 2巻



蒼山サグのライトノベル。売り文句は、「ロリもあるよ!」で、どうでしょう?

……嘘です。「も」あるよ、じゃありません。ロリしかいません。帯で言っているように、五人全員です。

「小学星のプリンセス☆」三巻(1巻2巻の感想はこちら)が余りにがっかりな内容だったので、1巻2巻をまとめて購入・読破。

内容は、小学校の女子バスケ部のコーチを頼まれた高校生の話です。以上。終了。それ以上必要?

……だけでは当然話にもならないわけで、内容を紹介すると、かなりしっかりしたスポーツ物です。各キャラクターの記号的な特徴を選手としての特徴にリンクさせ、とっちらかった五人のキャラをきちんと描き分けているのが上手いです。
一部この二つの側面で、役割分担に差違が見られるものの、あくまでも極一部でキャラのギャップとして描かれる面もあり、ブレはありません。

弱小バスケ部の各キャラ特徴をきちんと読者に印象づけた上で、短期間の練習と試合での奇策につなげる流れが極めて自然。物語の起承転結が、非常に上手く機能しています。

また、主人公の一人称で進む話の中で、章の合間に挟み込まれる五人の会話(SNSのログという扱い)が、物語を複眼的に見せる効果的な演出になっています。
電撃は、こう言う小技がいつもさえていますね。


あ、すみません。そんな事はいいから萌えるかどうかが問題だろうと、そう言う話になりますよね?

まず、キャラクターの特徴はきちんと描き分けられています。かと言って、良くある「適当なキャラを作った後、”小学生”とラベリングして一丁上がり」ではありません。約一名だけそんな気がするのもいますが、きちんと前提を外さない造型になっています。特に、本来なら「お姉さん」役を割り振って終わりになりそうな最高身長キャラに、コンプレックスを持たせて小学生らしさを出している辺り、侮れません。

また、一巻二巻で非常に大きな役割を分担するライバルの男子キャラは、これ以上ないほど典型的な小学生。まあ、要するにツンデレですが、「好き」が一途で、一途な故に複雑な感情に振り回される描写が大成功しています。ある意味、一番キャラが立ってるんじゃないでしょうか。

物語の背景となるイベントやキャラクター・小道具も、変にひねることなく、しかし空白にして放り出す事もなく、必要にして十分な小学校らしさを上手く取りそろえてあります。

こうして外堀を埋めた上で、各キャラクターとその関係を丁寧に描写しつつイベントを展開。お約束のドタバタを交えつつ、きちんと萌えさせてくれます。

特に、上に書いた、主人公がいない場所での五人の会話が挟み込まれることで、多面的な描写が可能になっているのがここでも有効に機能しています。二巻冒頭の再会シーンなど、あの伏線、つまり紗夜の書き込みを見た上でなければ、大きく威力を減じてしまったはずですし。


それにしても、読んでいて本当に安心できる作品でした。丁寧に作られて安定している作品は、やっぱり良いものです。
今月読んだ中では、一番お勧めできる内容でした。


以下、些細ですが問題点。

結局、設定が埋め殺しになってしまっている、主人公が高校バスケから弾き出される理由は、必要だったでしょうか?五人のキャラの過去や、「世間の目」を代表するイベントなどが組まれて居るものだと思ったのですが、本当に冒頭の説明文としてしか意味を持ちません。折角設定を作ったのですから、あれは有効活用しない手は無いと思うのです。

まあ、後出しの上に物語り上の機能も皆無な、二巻の幼馴染に比べればマシでしょうが。暴力という点でもおばさんとかぶっており、全く意味がありません。


それと、これは完全に電撃自体の問題なのですが、この題名と表紙では、内容を知りようがありません。
昨今ビニールをかける書店は激増しており、いい加減裏表紙にあらすじを載せる仕様に変えるべきかと。あるいは、帯でフォローするか、題名を変な省略形にしないようにするか……
ネットで情報を見て買うだけなら良いのですが、立ち寄った書店で内容にひかれて買うと言うルートを塞いでしまうのは、出版界にとってもマイナスかと思います。ネットの情報収集は、どうやっても自分が従来好んだ領域に偏ってしまいますから。

とりあえず、私は2巻の途中に至るまで、「ロウきゅーぶ!」が「籠球部」(バスケット部)の意味だと気づきませんでした。
この作品のキーワードは「小学生」「バスケ」の二つですが、表紙は小学生に見えず、(だから、二次元キャラの年齢なんて、記号アイテムが付いていない限り解りませんて!)題名も「籠球部」だと解る人間は極少数かと。

ラノベの読者数は先細りなわけで、決しておろそかにしてはいけない部分だと思うのですが。



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