2016年08月04日

素晴らしい、そして欠点だらけの怪作 『シン・ゴジラ』感想

ゴジラ(DVD)
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↑今作は設定的には「ゴジラがはじめて日本に来る」並行世界的なお話で、否応なく第1作と比較される運命にあります。


お久しぶりです。
なんとか生活に余裕が戻り、WoTとか#FEとかカルドセプトとかStellarisとか色々やっているのですが、死ぬほどやり込むだけの時間と労力が取れず、ゲーマーの自称がどんどん厳しくなってる状況です。

と言うわけで、2時間できっちり終わってくれる映画の比率が依然上昇中。非常に「語りたくなる」内容だったシン・ゴジラの感想を書かせていただきます。

では、最初に結論から。

最高に良くできた娯楽大作。だが、「それ以上」を目指した部分は悲惨な出来で、それ以外でも単なる粗としか言いようのない脚本の瑕疵が目立つ。


と言うわけで、細かい点を書いていきます。当たり前ですがネタバレまみれなので、嫌な人はとっとと帰れ!


まず特筆すべきは、序盤のテンポの良さです。映画が始まると同時に、いきなりなんの前振りもなく東京湾で異変が発生し、そこから政府首脳の対応と事態のエスカレーションが交互に映し出される形で、ゴジラの上陸まで一気に進みます。
原発事故の時の対応を詳細に聞いて回ったと言う事もあり、この描写は政府の迫力と良い意味でも悪い意味でもリアリティ(それっぽさ)満載。まあ、おかげで「それ原発のエピソードコピペしただけだろ」としか言いようのないシーンも散見されるのですが、それは後述。

登場するゴジラにしても、非常に間抜けかつ「今時着ぐるみ」(実際はどうか知りません)な代物なのですが、カメラワークの妙もあって、単に歩いているだけなのに恐怖を感じさせる見事なシーンが積み重ねられます。

そして、ゴジラの一時撤退から再上陸まで順を追って迎撃態勢の構築が進み、中盤のクライマックスである自衛隊 VS ゴジラのスペクタクル戦闘シーンへと突入します。ここまでは本当に文句なく傑作で、ケチくさく映画サービスデーを選択した自分を戒めたい気分でした。
このテンポの良さは、シーン割りの妙もそうなのですが、シナリオとして非常に洗練されている点が大きいでしょう。要するに、観客が望み、そして明らかに有効な対処(と言うかそれ以外にない)自衛隊による武力行使を「目標」とし、そこに至るまでの「障害」として、政府首脳の認識不足(観客は皆ゴジラの仕業と解っているわけですから)や対策本部の設置、クリアすべき法的課題や事なかれ主義(と言うか、平時では真っ当な感覚)で動く首相と言った諸々を配置して、それが一つ一つ外れていく過程を描いているので、会議のシーンばかりが続いても飽きる事がありません。会議1回ごとにちゃんと事態が動き、しかしそれを越える形で現場の情勢が悪化していく、と言うお手本のような盛り上がりを見せるのです。

ちなみに、この過程は自衛隊の武力行使の「たがを外していく」過程に他ならないので、拒否反応示す人が居るのも理解できるんですが、娯楽として最高に面白いので別に気になりませんでした。まあこれが中国による侵攻を扱ったシミュレーションドラマとかだと、さすがに鼻白むかもしれませんが、ゴジラですし。

ところが、中盤からシナリオはおかしくなります。
アメリカの空爆失敗と首脳部の戦死によって事態は緊迫するのですが、ゴジラはグースカ寝てしまっているため、画面上の動きが全くなくなります。そして、核を使うか血液凝固剤の投与かという二択が迫られるのですが、前者ではなく後者を選ぶ理由が主人公の雑な愛国心(?)だけなので、シナリオの「目的」として機能しません。
後で詳述しますが、上司が提示する「国連軍(作中では多国籍軍と言ってますが、安保理決議が出てるので国連軍ですよね?)に核を撃たせて復興資金を各国に出させる」は、ビックリするほど真っ当なプランです。

さらに問題なのが、ビタミンKだか凝固因子だかを投与する作戦を実施する上での「障害」が、「凝固剤が効かない可能性がある」「生産が間に合わないかもしれない」の2つである事。前者は可能性なので、それを回避する手段を模索・入手すると言うシナリオになりません。一応、写真しか出てこない博士が残した謎のメッセージというネタがあるのですが、そもそもなんのメッセージかが謎が解かれるまで提示されないので全く盛り上がりません。と言うか、「謎(課題)が提示される」「謎を解く(解決する)」がシナリオの基本なのですが、博士のメッセージは解かれてはじめてなんだったのか解る=課題が提示された瞬間解決される、なので、盛り上がりようがありません。
はっきり言いますが、監督は相変わらず脚本をなめてます(もう一つの可能性として、脚本という物を全く理解できないのうたりん、と言うのもあり、私は個人的にはこちらを推したい所です)。多分、まともにチェックできてません。後から書きますが、大量に残る粗はその証明です。
そして後者ですが、これはもう、「頑張って解決するんでしょ?」(破壊屋さんの言う「社畜クライマックス」)としか思わない手垢の付いた展開で、実際その通りになるので笑いも出ません。盛り上がると思ってるんでしょうか?

かくして、全く盛り上がらないまま取って付けたようなドイツ人の援助とか、適当に付け加えたかのようなフランスとの取引や、書き飛ばしたとしか思えない駐日大使の協力などを挟みつつ、話はラストミッションに進むわけですが、困った事にラストミッションは面白いです。もう、「やりたかったんだな、解る解る。俺も見たかった!」としか言いようのないような、無人機による飽和攻撃だの、首都圏鉄道特攻兵器だのを見せられ、テンションはマックスまで突き抜けます。
が、しかし…… いやあ、作戦内容聞いた時に予想したとおり、「血液凝固剤の経口投与」と言う間抜けで地味な作戦は画面映えせず、クライマックスは思い切り尻すぼみで終わります。何だこの片手落ちは!?と頭を抱えましたよ。終わりよければ全て良しと良く言いますが、ラスト5分間のテンションの落ち方は半端ではありません。

そしてですね、恐らく一番「きつい」のは、主人公と周囲の行動原理です。別に、愛国心だろうが民族主義だろうが別に良いんです。ゴジラですから。ですが、それをテーマとして話の根幹に据えるなら、ちゃんと主人公達が愛する「国」や「日本」を描く必要があります。「日常」を守るために戦うアニメのヒーロー達に日常描写が不可欠なように、家族愛をテーマにする(私は大っ嫌いな)ハリウッドシナリオが家族とのシーンを描き込むように、恋愛を主軸に据えるならヒロインを(あるいは恋人同士を)魅力的に映し出さねばならないように。家族が居るかどころか選出選挙区(≒郷土)がどこかも解らない、個人の描写がまるでない主人公が、国だの日本だのと口にしても、何一つ響いてきません。
別に、感情移入を前提としないキャラは良いのですが(何度も言いますが、ゴジラで娯楽作ですから)だったら、そんな大上段のテーマを(少なくとも正面切って)扱うのはやめろという話です。実際、意味不明の心情吐露を繰り返す主人公より、昼行灯の演技?だけやっている臨時首相の方が余程キャラが立っている辺り、明らかにこの辺は失敗です。

以上のように、非常に素晴らしい娯楽作なのです。特に、余計なシーンを省き、一気に物語を進め、エンターテイメントに徹した所が素晴らしい。しかし、省ききれなかった、あるいは省いた後に余計な物を足したとしかいいよのない娯楽性の無いシーンが異物のようにつきまとい、評価を下げざるを得ないのです。なんというか、150点-70点=80点というか、そんな感じともうしましょうか。庵野・樋口コンビの才能(あるいは実力)の歪さというものを、余すところなく示していると思います。

実は、もう一つ個人的には許せないポイントがあるのですが、それは本論ではなく以下の細かい点の指摘部分で挙げたいと思います。


と言うわけで、以下は細かい点。

あの作戦の骨子は「放熱に使われている血液を凝固させる事で熱処理を不可能にする」だったはずなんですが、なんで成功したらゴジラの体温下がるんですか?ECCS 的な機構を持ってるとでも言うんですか?

バンカーバスターが落ちてくるのに地下に避難させるって、死ねって事ですよね?

エヴァもそうでしたが、「機能を停止した敵」を指くわえて見てる世界各国はアホなのですか?もう一回空爆しろよ!

立川に集まった出撃部隊。半分位は民間からの協力者だと直前でテロップ出てるのに、「諸君ら自衛隊」だけを連呼する首相。私が民間協力者なら石くらい投げますね。

結局、なんで今ゴジラが現れたのかとか、行方不明の博士は何をしたのかとか、一番大きな疑問点がスルーされたままなんですが、本当に話を終わらせられない人ですね。

首都圏からの避難シーンが最悪のゴミクソ映画「日本沈没」(樋口版)と同じパターンで、当時の怒りが蘇って危うく素に戻りそうになりました。

小池百合子が居るなあと思ってみてたら、協力者に入ってて笑いました。

と言うか、つくづくパク…… オリジナリティが欠けており、どこかで見た描写を上手く演出する事に特化した作家だなあと。つまるところ、絵面が全く面白くなくて盛り上がらない社畜クライマックスにしても、逆に非常にテンポ良く進んで気持ちの良い会議シーン連発にしても、政治や行政を自分達のやっているアニメの企画会議や追い込み作業の感覚から、一歩も出ずに制作しているかトンチキな部分が出てくるんじゃないかと思うわけです。知り合いの電話一本で動いちゃうフランスとか。

そして、ゴジラ止まったかどうかも解らないのに、首都圏復興とかギャグですか!?

でまあ、最後のこれなんですが、スクラップ&ビルトとか、寝言言うのは本当に勘弁して欲しかったです。
初代ゴジラをなぞってるつもりなのでしょうが、あれは1954。戦争の傷もだいぶ癒え、朝鮮特需から高度成長への筋道をつける、極めて上り調子な時代の作品です。それが同時に、「こんな平和はまた戦争(的な事)が起きたらいとも簡単に吹っ飛ぶんだ」と言うリアリティに繋がっているわけなのですが、だからこそ「ゴジラを倒せば解決する」と言う話になるわけです(「最後の一匹とは限らない」とは言え)。何せ景気の良い状況なので。
一方、現在人口減と20年にわたる経済停滞でボロボロの我が国は、「ゴジラを倒しても元の斜陽国が残るだけ」です。それどころか、ゴジラに荒らされたスクラップだけが残る状態で、何もビルトできる余地がありません(官僚機構も政治体制も不変で、GHQが乗り込んできてくれるわけじゃないですし)。従って、あのエンディングは寝言にしかならないのです。むしろ、官房長官が提示していた、核でこんがり焼いてもらって復興費用全部出させる案なら、老朽化してひどい事に成ってる首都圏インフラ(今回の都知事選で争点にしなくちゃならないのにならなかった問題)一掃できて新品にかえられるので、それこそスクラップ&ビルトだよなあ、と思えてしまう辺り、なんだかなあと。普通に、核で動いてる生き物なんだから核は効かない、でいいじゃん?と思うわけです。てか、核の炎の中から起き上がって来るのが怪獣映画としては正解のはずで、日和ったんでしょうかね?


と、以上のように、良くも悪くも恐ろしく語り甲斐のある作品でした。

繰り返しますが、最初に書いたとおり、粗だらけで、しかし魅力に溢れた最高の娯楽作品です。見終わった後は間違いなく色々と語りたくなる事請け合いですから、オタク諸氏に置かれましては、是非とも誰かと一緒に見に行き、終了後の感想戦を本番として楽しい視聴体験をしていただきたいと思います。

以上、久々思うままに書き連ねました。
いや本当、観る事をお勧めしますよ。どうせ、もうみんな観てると思いますけど!

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タグ :映画

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この記事へのコメント
rewriteの感想記事を見返しに来たら丁度良く活動再開されたようですね、これからも各種レビュー楽しみにしています

シンゴジは見ていて問題点もよく分かるし、突き抜けて見事な点はビシビシ感じるしで、とにかく人と語り合いたい見事な娯楽映画だったと思います
Posted by KK at 2016年08月08日 00:49
なんか主さん、前までは共感出来るような批評してたけど最近はなんかある程度話題に上がってる映画の粗探ししてる風に感じる、、、
見に行って一生懸命映画の駄目なところばっかり探してそう
Posted by aaa at 2016年09月22日 23:46
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