2009年06月24日

エロゲー鎮魂歌 規制対象と規制領域の無原則な拡大

(この「同人サイトにおける」自主規制基準は、撤廃されました。ただし、ソフ倫の自主規制基準は変わりません。詳しくは記事末尾を参照して下さい 6/26)

大手同人物ダウンロード販売サイト「デジぱれ」が、自主規制基準を公開しました。

https://www3.llpalace.co.jp/dp/circleinfo.htm

一言で言うと、「新しいソフ倫基準に従います」ですが、勿論問題はその内容。
ここで、公表されていないソフ倫の新基準が解るという効用がでてくるわけですが……


規制対象ジャンル および キーワード (倫理機構より指示された対象から抜粋)
レイプ ロリ 輪姦 陵辱 鬼畜
逆レイプ 少女 相姦 逆陵辱 強要
複数プレイ 生徒会 獣姦 拘束 脅迫
車内わいせつ 援助交際 近親相姦 拷問 緊縛
  妊娠 強姦   奴隷
  妊婦     監禁
  孕ませ



ハイ、見事なまでに、売れ線が全滅です。
これがどれほどもの凄いことかは、お近くのレンタルビデオ屋にでも出向き、アダルトビデオコーナーでも眺めてみると良いかと思います。棚が、いくつ消えますか?
あるいは、人生オワタ劇場さんが言っているとおり、有名文学の内容でも余裕でNGになる規制内容です。

何度も、ソフ倫の降伏をベルリン会議とチェコスロヴァキア解体になぞらえてきましたが、とんでもないですね。裏切ったイギリスがドイツによる大陸支配を容認、位の状況です。
ガングリフォンを思い出しましたが、全く笑えません。

重要なポイントは、最後まで抵抗拠点となるはずの同人作品が、「表」の、つまり大規模販売ルートを断たれる方向へ動き始めたこと。(他の販売サイトが追従しないことを期待するのは、かなり厳しいでしょう。包囲網をしかれているわけですから)そして、規制対象がもはや性暴力云々を飛び越えて、ロリや近親、痴漢と言った「反社会的表現全般」へ拡大しつつあるということです。

まさか皆さん、この期に及んで「○○は入ってないから自分には無関係」などと言いませんよね?

ここまで来れば、もはや児童ポルノ法改正問題ですら、「最終防衛ラインの保持」または「国体が護持できるかどうかの条件闘争」と言うレベルです。
法律に先行する「自主規制」によって、既に「禁止するまでもなく死亡済」だからです。

実はこれは、珍しいことではありません。例えば、治安維持法が施行された時、本来対象であったはずの共産党は、既に絶滅寸前でした。カリフォルニアで有名な排日移民法が施行された時、既に毎年の日本人移民許可人数はギリギリ二桁という状況でした。

ここにおいて、最後に出てくる法律は、死体が埋められた後の墓標程度の意味しか持たなくなります。

だから、「違法はいやだから自主規制」などと言う事は、やってはいけない。やってはいけなかった。権利を主張しない者に、権利が与えられることはありません。「声なき声」は、声ではないのです。



パソコンゲームは、その登場初期からオタクをターゲットとした非常なニッチ市場でした。
キーボードで文字を打ち込んでキーワードを探し、下手をすれば表示に分単位かかるガタガタの映像十数枚に一万近い金を払う、そんな世界です。以後も結局は、マイノリティの性的ファンタジーを投影する形で発展して来ました。

ですから、その絵はオタク文化の代表であるアニメ絵の流行を敏感になぞりました。
その技術的発展は、オタク文化の代表となっていったコンピュータの発展そのものでした。
そこに描かれる物語は、オタクの持つコンプレックスや願望やルサンチマンや絶望を投影した物でした。

つまり、パソコンアダルトゲームの歴史とは、そのままオタクの歴史でもあったわけです。少なくとも、その重要な一側面を担ってきたものです。
映画で言えば日活ロマンポルノ、と言う評価は、あながち間違いではありません。
エロを抜いて他メディアへ移植、と言う事が頻繁に行われたのも、つまりはそのテーマがオタクにとって普遍性を有していたからです。

また、アダルトゲームは表現としても内容としてもエッジであったため、一定年齢以上のオタクにとって、大きな地位を占めてきました。
「エロゲオタ」以外のオタクでも、作品名やキャラ・物語の類型など、「教養」として、一定の知識を要求されるものでした。

つまり、アダルトゲームはオタク文化の代表選手の一人だったわけです。

私は、さっきからアダルトゲーム、いやもっとストレートに言いましょう。エロゲーの墓碑銘、鎮魂歌を書いています。
事態がここまで進んでしまったら、もはやできることは、他への波及防止とダメージコントロールしかありません。例えそれが、「せめて港の近くまで運んで沈没させよう。将来の引き上げ作業が少しは楽になるから」と言うレベルであったとしても。

いずれこの自主規制がなし崩しになるとしても、そうなるまでの間、適応進化するための時間と労力を取られ、人材の流出や資金繰りの悪化に苦しめられ、「失われた十年」を費やすことになるのは間違いないでしょう。
ただでさえ縮小傾向にあった業界が耐えられるとは、とても思えません。


何だか、凄く既視感のあるパターンだなと思ったら、医療「改革」ですね。
厚労省の「医療制度さえ守れれば医療は崩壊しても構わない」と言う見事な倒錯政策で、保険あって利用なく、設置基準あって病院なく、診療基準あって医師はない、素敵な事になったアレです。先進国最低の費用で最高水準の国民健康を達成していたシステムが、ほんの十数年ぺんぺん草も生えない荒野に。

あれも、(人口に膾炙するイメージとは違って)医師会がまるで「抵抗勢力」として機能せず、反発を恐れて「改革」案を丸呑みしていったあげくの惨状です。
あちらも、崩壊したシステムを立て直すのは向こう二十年は無理だろうとか言われていますが、さて……

それにしても、さすがにこれには開いた口がふさがらないのですけどね。加盟各社は、こんな基準を「仕方ない」と言うんですか?そうまでして守らねばならない「業界」って、何でしょう?
それこそ、「食っていく」事が目的なら、ブラックも良い所のあんな業界に居る理由はないと思うのですが。

とにかく、民主党についてはまだ「妥協というわけではない」と言う可能性もあるようなので(リンク先は二次元至上主義さん)、手紙等のロビィングは、できる範囲で続けて下さい。
まだ陥落していない販売サイトに、今までどおり売り続けて下さいとお願いするのも、死活問題として重要になってくるでしょう。

オタク個々人まで諦めてしまったら本当に試合終了なので、まだできる事があることを喜んでおくといいと思います。完全無欠の自己欺瞞ですけどね!


6/26追記
何と、ユーザーの声に応える形で、デジぱれはこの新基準を撤回し、同人作品については従来どおりの形を続けることを発表しました。

デジぱれ★さーくるいんふぉめーしょん

ちなみに、文中にある今までどおりの利用規約は、何故かリンクになっていないのですが、↓です。

http://www3.llpalace.co.jp/dp/kiyaku.htm

元々自主規制をしていた、
> 作品内に登場するキャラクターの年齢が「18歳未満」であることを特定する表現は行わないで下さい。 直接的な年齢描写の他、学年や所属集団の表現もこれに含みます。
> 「猟奇」「切断」「近親相姦」「獣姦」「死姦」「出産」はみだりにこれらの描写を行わないで下さい。


と言う内容のみですね。確かにこれなら、関連団体へは「きちんと自主規制しています」と言える上に、実質的には骨抜きに出来そうです。「みだりに」なんて言葉がポイントですね。

これは、一連の流れの中で、はじめて出てきたユーザー主導の目に見える成果です。
小売は商売でやって居るわけで、その中でユーザーの声がはたす役割は小さくありません。
働きかければ動いてくれることもあるという事の証明が出てきたわけで、張り切って要望を伝えていきましょう。



表現規制関連エントリーはこちら








同じカテゴリー(社会)の記事
 ふざけないでいただきたい/オリンピック盗用ロゴの擁護について (2015-09-07 23:00)
 色々面倒くさい憲法9条の話 (2013-01-05 20:00)
 あっはっは! (2012-06-27 22:00)
 この国、政治的に詰んだって事ですよね (2012-06-26 22:00)
 著作権が守る物/行政の公開情報を引用して逮捕と言う麗しき世界 (2012-04-17 22:00)
 誰が為の公共性/アレフ施設へのガス供給工事不許可適法判決 (2012-03-15 20:00)

この記事へのコメント
私がこれで思い出したのは大政奉還です。
この若さで、幕末の志士達の無念さが解るとは思いませんでした。
AMAZONの頃からこの兆候はありましたが…
実際にここまで簡単にやられると、怒りを通り越して諦観してしまいました。

まぁ、まだ出来るだけの事はやるつもりです…後悔したくはないので。
Posted by KG at 2009年06月25日 00:52
私も、昨日からメールを打ってました。本当は手紙を速達で送るのが良いのですが、悪筆で手書きすると自分でも読めなくなるレベルなので。

とりあえず、最悪今回の改正がされてしまったとしても、手紙や意見が集まって存在感が目に見える形で残れば、続く施策を躊躇わせる効果くらいはありますから。

大政奉還も、幕府側は主導権保持のための苦肉の策のつもりだったんですよね。
結局、マッチポンプそのものの薩長に、やりたい放題やられていったわけですが……
Posted by snow-windsnow-wind at 2009年06月25日 22:07
レスに感謝します。
日本は昔から、寿命を延ばそうとして返って縮める事をしますね。

しかし、良いニュースもありますよ。
デジぱれが規制を止めて、これまでの経緯をまとめて公開しました。
デジぱれにはこのまま、圧力に負けない姿勢を維持してほしいです。
ユーザーの声がこうやって反映されるのは素晴らしい。

ソフ倫もこの動きに追従してほしいですが、ただ、メディ倫がどう動くかが
気になります。ここ一番で粘ってほしいものですが・・・。
Posted by KG at 2009年06月25日 23:10
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。