2009年07月14日

文句なしの傑作 ヱヴァンゲリオン劇場版「破」感想

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 オリジナルサウンドトラック SPECIAL EDITION
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 オリジナルサウンドトラック SPECIAL EDITION


解りやすい演出が効いていた音楽を思い出し、サントラのリンクを貼りつつまずはスタンスから。
この作品は、何というか、自分の宗派を言った上でないと語れないようなデリケートな問題(笑)を含んでいますから。

とりあえず、当時テレビ版はリアルタイムでは見ず、放映終了後に友人からビデオを借りて視聴。
見事にドはまりして何度も見返し、そして劇場版に激怒して13年間怨念を募らせて来た、と言うのが基本スタンスになります。
旧25・26話は、制作上の問題、映画版に下駄を預けた上での緊急策として目をつぶった物の、あのラストには怒り心頭と言う構図。まあ、本田透が何度も述べている怒りを完全に共有できる、と言えば解って頂けるかと。

と言うわけで、「破」です。正直、「序」が、ラミエルが変身したり綾波の顔が光ると言った、割とどうでもいい変化だけだったため、期待していませんでした。だから、今まで見ていなかったわけです。
ループしているらしい世界の構造や、様々な改変点はともかく、あの段階では例によって「臭わせる」に過ぎなかったわけで。それを信じてワクワクできる素直さを奪ってくれたのは、他ならぬあの監督ですしね!

と言うわけで、特に期待することもなく視聴。ですが、これが大当たりでした。
あまりの画面と話の密度に終始圧倒され、「そろそろ2時間経ったろう」と思って時計を見ても、まだ半分。あざとく流れる挿入歌や解りやすい展開の数々も、全く手を抜かずに演出しているため、斜に構えて突っ込む気も起きません。
とにかく、手に汗握って最後まで身を乗り出して夢中になり、終わった瞬間売店でパンフを購入。後日、もう一度見る事を誓いました。それぐらい意外で、本当に面白かったのです。


以下、ネタバレ全開。
どうせもう見ている人しか居ないでしょうが、万一未見の人がいたら、今すぐこんな下らないページなど閉じて、映画館に走って下さい。

冒頭、新規登場のエヴァ5号機は、パンフにあるようなガンタンクと言うよりも、アーマードコアの多脚型のようなデザイン。これが、狭いシャフト内をキュルキュルと進む様子にまず胸がドキュン。大好きです、多脚型!
しかもその動きが、キャラクターのセリフそのままに、パイロットが感じる慣性と、運動エネルギーの相殺に悲鳴を上げる脚部の軋みまで感じられそうな、重々しいもの。つかみとしては完璧です。

その後も、矢継ぎ早に使徒が襲来。しかも、全て状況や戦い方、使徒の特性から軍隊の支援形式まで異なっています。

旧作のシンクロ攻撃時に使われた音楽に乗り、ライダーキックでボウガンの矢を押し込んでATフィールドを突破する2号機。
旧作の知識と事前の死亡フラグが「今日の日はさようなら」に収斂し、悲劇が確信に変わる中で、シンジにシンクロしてやめろと叫びたくなる対三号機。
そして、圧倒的な強さで、全てを蹂躙していくゼルエルの恐ろしさ。(あれは、怪獣映画としての面目躍如でしょう)

旧作で言う「奇跡の価値は」の使徒についてだけは、相変わらず「特に理由の演出もなく、99%不可能と言われた作戦が成功してしまう」という物で納得できませんでしたが、不満点はそれくらい。

挟まれる日常シーンにしても、旧作のような痛々しさは抑えめで、混じって授業を受けたくなる楽しい学園風景です。あの短い枠の中で、わざわざ海洋研のシーンを新規で入れているのは象徴的でしょう。ペンペンも、今回は単なる背景ではなく、雰囲気を盛り上げるための重要なコマ。トウジと弁当を取り合ったり、本当に悲しそうな顔でシンジを見送ったりと、きちんと話に参加しています。

また、完全に全てを変えてしまうのではなく、アスカが風呂から飛び出してくるシーンのようなセルフパロディや、ゼルエルが発令所に侵入するシーンのような印象的なシーンをそのまま使って、きちんと「良い所を残す」事を忘れません。

また、画面の演出・密度については、もう現時点で他の追随を全く許さないレベル。
転がりながらATフィールド多段展開して弾幕をかわすビースト2号機や、ブーストを吹かして初号期が駆け抜けた後、少し遅れて吹っ飛ぶ画面手前の乗用車など、外連味が効き過ぎています。
画面転換時のテープレコーダーの「カチ」など、全てのシーンを制作者がきちんと制御している印象。

弁当にまつわる一連の新イベントも、彼らの人間関係を可視化し、成長の軌跡を見せる上で効果的。「ああ、彼らもきちんと前に進んでいるんだな」と思えるのは、13年前から成長しているんだか良くわからないファンとしては、本当に嬉しいものです。

とにかく、全体的に極めて解りやすく、エンターテイメントに徹した傑作と言えます。
旧作の「深さ」というのが、大部分は苦し紛れの演出が生んだ幻惑だったことは既にバレてしまっているわけで、この方向でのリメイクは大成功でしょう。一方で、エヴァや補完計画の秘密については、きちんとキーワードを体系的に配置し、来るべきクライマックスに向けて話を盛り上げています。

このまま行けば、間違ってもパイプ椅子や実写コスプレ映像で終わることはないでしょう。十数年越しの怨嗟は、漸く断ち切ることが出来そうです。

もっとも、神云々の話が変な方向に転がると、どうなるか解ったものではないですが。
何より、旧作とて、今回リメイクされた19話辺りまでは、圧倒的な力を見せつけた歴史に残る傑作(劇場版公開後は、良くて「怪作」でしょう)だったわけですから。

でもまあ、今はそんな不安など忘れて、大喜びで楽しむべき時だと思います。
近日中に、もう一回見に行かないと。


あ、ちなみに、斎藤美奈子がその著作で諧謔混じりに言っているように、やっぱり「悪いのはゲンドウ」ですよね。
他の大人達は、大分マトモになっている印象ですが、あいつはダメです。一見歩み寄ろうとしているようにも見えますが、あれ、結局レイが妻に見えたからなわけで。「大人になれ」と言う言葉とは裏腹に、行動原理は相変わらず子どもの駄々と同レベル。
「あんたが大人になってれば、一連の悲劇はなかっただろうが」と、13年前と同じ罵倒を投げたくなってきます。

まあでも、結局彼は本来主人公が越えなくてはならない「アンチテーゼとしての父親」なわけで、この描き方で100%正しいのでしょう。
母親の暴走に助けられることなく、自力でレイを救い出した今回のシンジ君なら、越えてくれると信じてみても良いと思います。

(ねえ、アスカは?僕のアスカ様は?うるさい黙れ!)




その他のエヴァ関係エントリーはこちら
その他の映画関係記事はこちら





同じカテゴリー(アニメ・映像系)の記事画像
「HELLSING X 上映イベント」に行って来ました
アニメ PSYCHO-PASS #06 「狂王子の帰還」 感想
アニメ版「リトルバスターズ!」 第6話感想
アニメ PSYCHO-PASS #05 「誰も知らないあなたの顔」 感想
アニメ PSYCHO-PASS #04 「誰も知らないあなたの仮面」 感想
アニメ版「リトルバスターズ!」 第5話感想
同じカテゴリー(アニメ・映像系)の記事
 意志決定の機会を与えられない物語『この世界の片隅に』 感想 (2016-12-07 00:00)
 「作家性」とは歪さと見つけたり/『君の名は。』感想 (2016-09-08 00:00)
 面白いのが一番!『ゴーストバスターズ』リメイク版 感想 (2016-09-02 01:00)
 素晴らしい、そして欠点だらけの怪作 『シン・ゴジラ』感想 (2016-08-04 00:00)
 これはダメな映画では? 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想 (2015-07-10 00:00)
 酷いなこりゃ 映画版Steins;Gate 『負荷領域のデジャブ』 感想 (2013-05-02 00:00)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。