2009年08月22日

せせこましく魅力的な宇宙戦 「ルナ・シューター」 3巻 感想

ルナ・シューター〈3〉 (幻狼ファンタジアノベルス)
ルナ・シューター〈3〉

本当に残り一巻で終わるのかと不安だった、林譲治の「ルナ・シューター」シリーズ完結編。

ちなみに、2巻の感想はAMAZONのレビューに上げてあります

私も銀英伝を読んで育った以上、ノベルスと言う形態には愛着があります。上下二段組みって素敵ですよね!
ですが最近この形態は、まんだらけ(札幌にもあります)がほとんど引き取ってくれなくなってしまったので、買うのが躊躇われる所。面白くなくて叩き売る時の事を考えると、リスクヘッジができないわけで。

ですがこのシリーズは、安定して購入できる佳作です。
と言うわけで最終巻。

一巻二巻の、せせこましくてみみっちくて、つまり余りにもリアルな戦闘描写は健在。主人公達が介在しないシーンでは、ほぼ全て主観人物が死んでる気がするのがアレですが……(これは既刊部分も一緒)
この良い意味での「しょっぱさ」は、谷甲州の航空宇宙軍史を彷彿とさせます。

そして今回のメインは、前巻で見つかったワイアードなヒロインとの会話。それと、毎回巻のラストに「引き」として持ってきていた重要情報の、積極的な探索になります。
つまり、主人公がAI相手に格闘する一方で、後方にいるお偉いさんや科学者がマクロな視点で情報を解析し全体像を明かしていく構成。

こちらはリアルとタチが悪いの中間と言った描写で、とりあえずサスペンスとしては及第点と言った感じでしょうか?多分、地球の市民生活や状況が、全く描写されないのが問題なのでしょう。
このために、ヒロインが最後にあかす情報が、破壊力を大きく減じています。結局、世界を変えるための行動によって、世界がどう変わったかが見えてこないわけで。

一方、敵であるラミアの描き方はなかなか上手く、最後のオチにしても彼らなりの(と言うか極度の)合理性が、逆に親しみすら感じさせます。
もともと機械や純粋な情報がメイン、つまりSF作品なわけで、人間や組織の描写が軽くなるのは当然と言えるでしょう。描こうとして描ききれない、良く意図のわからないシーンもあったりしますが。(宇宙機を司令官が囮にするシーンとか)

なお、前回気になった文法の混乱等校正の甘さはあいかわらずで、やや読みにくい部分があるのが残念な所。
倒置文が恐ろしくテンポを損ねていたり、時制がおかしかったりと、編集者・校正者がまだ未熟なのかなと思います。ただ、前二巻よりは減っていると思うので、これからこのレーベルが歴史を重ねていけば、段々とマシになっていくのかも。

とりあえず、きちんと全三巻で過不足なく物語をまとめることに成功した、良い作品だと思います。
それにしても、これってジャンルはどうなるんでしょうね?ライトノベルと言うにはキャラを出しませんし、SFと言うにはその要素はワンオブゼムで、一番近いのは架空戦記でしょうか?

有川浩のハードカバーなんかは、重めと言ってもライトノベルの空気と文法で構成されているんですが……
キャラ萌えを前面に出さない、「重めのライトノベル」みたいな作品をカテゴライズするジャンルが欲しい所かもしれません。
いやまあ、もともとの「ノベルス」と言うのがそう言うジャンルで、ライトノベルが勢力を拡張して脇に追いやったのが、歴史なんですけどね。

何にせよ、なかなか満足度の高い一品でした。





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