2009年08月13日

『ソリッドファイター完全版』 感想

一般書店での取り扱いはないので、アマゾンのリンクは無し。ただ、電撃屋ではまだ在庫あるみたいです
まあ、あちこちのアニメイトで売れ残ってますけどね。
上記リンクはアフィリエイトではないので、貴様なんぞに小銭稼がせてたまるか、と言う方も、安心してお踏み下さい。


古橋秀之と言えば、一般的な代表作は超妹大戦シスマゲドンになるんでしょうか?
あれは妹萌えを意図的に曲解した怪作/快作でしたが、個人的にはある日、爆弾がおちてきてが傑作だと思います。
フィニイかブラッドベリかという、叙情的なタイムファンタジーが粒ぞろい。一気にファンになったものです。

そんな彼の打ち切られた初期作品に、未発表分を加筆した完全版がこれ。発売は去年、購入は今年頭。ただ、格闘ゲームをフューチャーした素材が余り好きではなかったこともあり、積まれていました。

ですが今回読了して、半年以上積んでいたのは勿体なかったと少し後悔。
文体は典型的な一人称ライトノベルですが、1997と言う発表年を感じさせないほど「新しい」(死語を使うなら「ナウい」でしょうが……)内容のゲーセン物です。
特に、当時既に衰退が決定的だった格闘ゲームをある種の滅び行く物への哀惜を込めて描くと共に、未来はネットワーク化にしかないと断言してみせる辺り、感心してしまいます。勿論、1997の段階で既にディアブロの普及があり、ネットゲームの可能性と限界(制限)は、大体明確になっていました。ただ、そこから堅実に設定を積み上げて、当時でも現在でも通用する世界図を描いているのは、SF作家として優秀な証でしょう。

一方、キャラクターは基本的にステロタイプで構成され、魅力的ではありません。勿論これは、彼らが物語のコマである事の裏返しでもあり、作品自体の魅力を損なうものではありません。
この作品において、アーケードで繰り返される対戦ゲームとそれに関わる人々のあり方、そしてクソッタレで魅力的なゲーム業界(笑)こそが主役なのですから。

ですから、巻末についている外伝のプロットなども、コテコテのお約束で構成されていながら、間違いなく一つの核心を衝いて感情を動かすわけです。


とにかく、丁度ゲーセンに通い始めた時期がストIIブームと重なった人間には、非常に面白い内容でした。ストIIはやってなかったにもかかわらず、です。(同時期に流行っていた、UFOキャッチャーをやりに行ってました)

それにしても、古橋さんも新刊がなかなか出ませんねえ。
実力はあるんですから、一つ売れたらとんとん拍子かと思うんですが、ネタが毎回マイナーなのが効いてるんでしょうね。




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