2009年08月19日

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 4巻 感想

俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈4〉 (電撃文庫)
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 第4巻

2010年10/5追記:他の巻やアニメ版の感想はこちら


伏見つかさの「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の4巻を、また遅れ気味ですが読破。発売日直後には買ってたんです。例によって、後回しになってただけで……

前巻の感想はこちら
予告のとおり、一旦物語は幕を閉じました。ただし、その割にエピソードはとっちらかっており、ラストの一点に向けて収束していく気持ちよさは、余りありません。

個々のエピソードの内容やギャグの切れ味が相変わらず見事なので、余り気になりませんが、どうにも統一感が不足しています。ラストシーンも直前のイベントがブレーキになっていて、正直微妙です。(解りやすく言うと、あるキャラの「攻めきれなかった」バッドエンド直後に、そのエピソードでは影も形もなかった別のキャラとのフラグを垣間見せて「to be continued」と言う趣向)

兄妹の過去や幼馴染への態度の意味など、重要な伏線を残したままですしね。解釈はいくつかできるのですが、パーツが決定的に足りていません。


ただ実は、今回の場合、迷走するのは必然とも言えるのです。
何故なら、開始直後・三ページ目で全ての結論は出てしまっているのですから。

「俺はあいつの、兄貴なんだよ」

この一言で、妹への兄弟愛・家族愛・憎しみ・諦念・反発・義務感・好意・想い…… 全てをぶち込んでいるわけで、もはや「妹物」としては出落ちなのです。何しろ、「妹」物である事を貫くという宣言なのですから。

例えば、良くあるパターンですが、「妹としてじゃ嫌」などと妹が言い出した時点で、妹物は既に「妹」物ではくなってしまいます。禁忌のアンビバレンツが破れれば、あとはただの恋愛物。妹物の、この破局を約束された構造に打ち勝とうとすれば、妹をヒロインにするわけはいきません。
それがあの宣言の意味であり、主人公は安全圏へと後退し、妹はヒロインたる資格を失ってしまうのです。


だから、各エピソードができが良いにも関わらず微温的で、前巻のような強烈なパンチが無いのも当然。最大の山は、最初に越えてしまっているのですから。


もっとも、この構造が脅かされる可能性が垣間見える(お約束とギャグで紛らわせていますが)エピソードとして、妹が幼馴染に噛みつく話が出てきます。ただ、これは前述の通り伏線が未回収で、賑やかしの挿話にしかなっていません。ここをテコに山場を作って伏線を回収すれば、一気に引き締まったと想うのですが……


やはり、前巻から四ヶ月程度で、色々と練り込みが不足してしまったのではないでしょうか?
出版社の経営や作家の生活もあるので仕方ないのでしょうが、本当に勿体ないですよね。



なお、今回のアンケート葉書は変わっています。「元ネタが解らなかった」リストを出せなんてのは、読者層のスクリーニングをするためでしょうかね?私はほぼ全て解りましたが、YU-NOだのA.D.M.Sだのの話がわかるのは、30台前後より上の筈。桐乃は、一体どうやってプレイしたのやら…… やっぱり、サターン版ですかね?

しかし、一番重要なのはやはり最上段の内容。
読者アンケートで今後の展開を決めるのは、短期的には上手く行くかもしれませんが、長期的にはマイナスでは?電撃の売りである編集部の能力を、削いでしまうことになりかねません。
第一、この作品の場合、主人公と他のキャラの関係は副次的で、妹を中心とする人間関係が面白さのキモだったのでは?黒猫も主人公も、才気溢れる桐乃と言う恒星の周囲を回る惑星として、光を放っていたはず。
また、この作品自体、オタク文化への愛や二巻の生硬な主張(あれを主人公に語らせるのは、手法としては「生」すぎます)に典型的に出ているように、作者の情熱を未整理なままぶちまける事が原動力になっていた感があります。なので、アンケートのようなやり方で内容を限定しすぎると、力を発揮できない気が。

とっちらかってしまった設定を仕切り直すという意味かもしれませんが、角を矯めて牛を殺すことになりはしないかと不安です。



それと、何やら公式サイトがオープンしてますね。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない β版公式サイト

ちなみに、googleで検索すると、「アニメ化発表ではありません」と出てきて笑いました。やっぱり、誰でもそう思いますよね?
twitterを使った逆書評というのは面白そうですが、公式にキャラを使うことの祖語は難しそう。暴言吐いてなんぼのキャラですが、リアルの相手に作品内と同じ調子で罵詈雑言を浴びせるわけにも行かないでしょうし……

相変わらずtwitterは見にくいなあ、とか言う話は置くにしても。



その他の「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」関連エントリーはこちら






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