2009年09月03日

今夏はアニメが大豊作 「サマーウォーズ」感想

僕らの夏の夢/ミューズ
僕らの夏の夢/ミューズ

山下達郎の主題歌が、こんなにしっくり来るとは思いませんでした。
「時をかける少女」(正直、主題歌は微妙だと思います)より、この点では間違いなく勝っています。


「宇宙へ」を見損なったせいで、東京で見た映画はヱヴァ2回目とこのサマーウォーズという状況。うん、オタクとして、完全に正しい状況ですね!


さて、ヱヴァ「破」でアニメってやっぱり良いものだ、と感慨にふけった人は、必ずこれを観に行くべきです。予告編で放っていた輝きは、決して偽物ではありません。

内容は、一言で言うと、コテコテの「アニメ映画」。
今よりさらに技術が発達し、アバターを介したネットワークがインフラとなっている世界で、数学的才能はあるが内気な主人公が、ガールにミーツして世界を救う、そんなコテコテの物語。あ、家族礼賛も入ってます。

とにかく、全編アニメの文法に溢れた無茶な力押し展開の連続。しかしその力押しは演出と相まって非常に効果的。皮肉な笑いを浮かべる前に、楽しい笑いや手の平の汗に昇華されます。

あれだけ数の多い大家族を出しながら、各キャラの描き分けも短時間でソツなくこなし、空気と化しているキャラはいません。あ、完全に「三枚目を通り越して邪魔者」になってる奴は、一人いましたが。
とにかく、格好から動きまで、きちんと記号化して一目で理解できるようにし、とても丁寧にイメージを構築しています。割烹着とか、生意気そうな目(+ゲーム機)とか、妊娠中とか、アロハとか……

でも、カズマは絶対女の子だと思いますよね!?

展開も、山場をいくつか用意し、それぞれ主役を変えて「要らない子」を作らない堅実な作り。まあ、おかげで中盤主人公とヒロインが空気になってましたが、ちゃんと伏線は張ってるので問題なし。

また、各山場についても、とにかく見ていて楽しくなるギミックを多数盛り込み、全く飽きさせることがありません。100テラFLOPSの大学用サーバー(NEC製・笑)とか、漁船を池に浮かべて(水冷式だから!)電源にするとか、自衛隊の「ちょっと言えない部署」からちょっぱってきた、10GBPSの衛星回線アンテナ乗っけた兵員輸送車とか、ハッタリのきかせ方も絶妙。

ちなみに、スタッフロールを良く見ると、自衛隊の「ちょっと言えない部署」が、一体どこか解ります(笑)。


それにしても、一つ一つの描写の気持ちの良いことと言ったら!
ネットワーク上で、一つの発言が、レスされ引用され転載されてもの凄い勢いで情報が集積していく様子とか、逆にネットワークの情報がズタズタになっていく様子の「映像」センスが、もの凄いです。

そもそも、どこか間抜けなアバターが大量に空間内を飛び回っている描写など、正に日本独自のサイバーパンク。この辺、電脳コイルに通じる所があります。

この映像の素晴らしさは、何もアクションだけではありません。旧家に親戚が集まる夕餉の光景や、蝉の声だけが空虚に響く哀しみに満ちた静かな夏の午後、蚊帳を吊った部屋にゆっくり差し込み始める朝日など、情景描写も力が入っています。もうあの光景は戻らないと知っていても、夏休み毎に帰った親の実家にまた行ってみたくなりました。
「帰りたいのは故郷ではなくて、幸せだったいつかの時間」(安孫子三和「レイニー・デイ」 みかん絵日記 花とゆめCOMICS版 第3巻収録)という奴です。

感情表現も実に漫画的・アニメ的ですが、それは幼稚と言うより愉快で、そして実に解りやすいです。
中身のない「謎」や、思わせぶりなだけの高尚ごっこも要らない。娯楽を、楽しさを、「アニメ映画」を作るんだという、制作者の気概が伝わってきます。

ラスト近く、「そうなるだろうな」と思っていたも、実際に「そうなった時」の感動に全て飲み込まれる逆転劇や、主人公の本気モードの泥臭くて格好良い描写など、本当に良いシーンが盛りだくさん。上映中、全く退屈しません。
いやあ本当、徹頭徹尾、見ていて気持ちの良い映画でした。


とにかく、見ていない人はオタクとして損失も良い所なので、是非鑑賞し、晴れ晴れとした笑顔で映画館から出てきて欲しいと思います。



なお、以下は些末ですが気になった点。

一つは、おばあさんが電話をかけまくるシーン。あれは、もう少し工夫して欲しかったかも。もともとお婆さんは存在感だけで十分強力なので、変に説教臭いことを言わせても、むしろマイナスかと。
黒電話の描写などは実に良いのですが、(あれは、停電時でもNTTから回線経由で電力が供給されるほど冗長性の高い機器。よって、ネットが大混乱でもびくともしません)ハッパをかける必要性が描写されていないので、どうにも違和感が残ります。電話をかけられる側が、「もうダメだ」と諦めかけている、と言った描写があれば別なのでしょうが。

もう一つは、「セントラルサーバーを持つ一元的なネットに、インフラ乗せるな馬鹿」と言う突っ込みですが、素直に飲み込むのが大人の対応でしょうね。暗号強度弱すぎないか?と言うのも含めて。

まあ、弁護するならば、一元的管理でないと、全ての情報を集約して公共料金支払いから全ての買い物一括提供は難しいという現実があります。あと、暗号強度については、「技術があってもそれを悪用しようとする人間はほとんどいない」という話でしょうか。



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