2009年09月08日

予想以上に……ひどい。 映画「宇宙へ。」感想

先日見損ねた「宇宙へ。」(そらへ。と読む……)を、週末に鑑賞してきました。
地雷臭に敏感な友人達は誰も付き合ってくれなかったので、一人寂しく新宿へ。

結果、感想は表題のとおり。地雷を踏んだのに悪口を言い合う相手もいないと言うのは、本当に悲しいものですね。


内容を一言で言うと、「下手くそなプロパガンダ」です。
FOX辺りなら予想も付く内容ですが、BBCと思って油断していました。テレビで流れていたら横目で見ても良い、程度の内容です。

まず、原題は「ROCKET MEN」。つまり、主にオリジナルセブン(wikipediaの該当記事はこちら)を中心にしたドキュメンタリーです。

しかし、それ以外の点に関して、驚くほど焦点が合っていません。
まず、冒頭冷戦構造を説明した上でマーキュリー計画に入っていくのですが、「ソ連に先行されていた」と言う、一番重要なポイントが抜けています。米ソ対立の一環として開発競争が行われていた、と明言している以上、この基本設定を説明しないのは片手落ちではすまないでしょう。

「偉大なる西側」をアピールしたかったのかもしれませんが、だとしたら逆にここは取り上げるべきです。「偉大な資本主義陣営の逆転劇」と言うドラマを描けますから。ここに限らず、東側の映像も事件説明も一切無いため、恐ろしく平板な内容になっています。
マーキュリーとジェミニとか、普通の人が一見しただけだと間違い探し状態。ソ連の機体が混ざっていれば、画面が賑やかになるのに。

後半に頻繁に出てくる「人類全体のために」と言うメッセージも、序盤の説明との矛盾以前に、画面とあっていません。人類人類と言われても、画面上にはメイドインUSAしか出てこないのですから。そう言うテーマで行くなら、ソ連を「偉大なライバル」とし、「切磋琢磨しながら競い合って月を目指す」と言う描き方をすべきでしょう。

この辺の、知らない人間にも理解できるように、と言う配慮は徹底的に不足しています。ランデブー・ドッキング方式の説明を、完全にすっ飛ばしていたりするのには唖然。プロジェクトは段階を踏んで進んで行っているのですから、簡単なCGで説明するだけで、月への階梯が可視化できるのに。
アポロにいたってやっと「丸い地球」が肉眼で確認できた、と言う話も、それだけ言われても意味がわからないのでは?(ジェミニや現在のスペースシャトルや国際宇宙ステーションの高度では、「地球」の見え方は、ジャンボジェットから見る場合と実は大差ありません。つまり、「目の前に巨大な湾曲円盤」であって、球を認識できるほどの視野は得られないのです)

とにかく全体的に、何を描きたいのか、どう描きたいのかが見えませんでした。これだと、知らない人間は訳がわからず、ある程度知っている人間は溜息をつくのでは?

また、もう退役が決まっているスペースシャトルとその事故を、あんなに大きく取り上げる必要はあったのでしょうか?未来への前向きなメッセージで終わるなら、シャトルは最小限にして、開発中のアレスの発表辺りで締めくくればいいと思うのです。
エンタープライズの着陸テスト映像の使い方も相当ひどいですが、(知らない人間は、シャトルをSFに出てくる、ジェット機の背中から飛び立つ機体だと思うのでは?)チャレンジャーやコロムビアは触れるくらいで良かったのでは?

ついでに、アポロ8号からの宗教メッセージや、第一次湾岸戦争の方のブッシュ大統領の演説が大きく取り上げられるので、どうにも宗教臭さまで出てきます。

大体、宇宙飛行士に焦点を当てているのに、ガス・グリソムやアームストロングが事故(前者マーキュリーの沈没、後者月着陸船のテスト中爆発)から生還した理由を「運」と言い切るなど、(しかも、二回も!)何とも失礼な内容に。「ライトスタッフ」なめんな!


最後に、ゴスペラーズの日本語主題歌を入れた博報堂の担当者は、死ねばいいと思いますよ。
しかもその歌詞の内容は、「恋人が出来て世界が変わりました」という、恐ろしく個人的で目の前しか見えない系統の物。いや、別にラブソングは良いんですよ。でも、多くの予算や個人の献身を悪魔のように飲み込んで行われたビッグプロジェクトのドキュメンタリーで、そんな個人的な物を持ってきてどうするんですか?
ラブソングを使いたいなら、「FLY ME TO THE MOON」で行けばいいじゃないですか!正直、最後にシナトラのあれが流れるだけでも、だいぶ印象は違うはず。内容も上記の通り「知らない人間置き去り」の説明不足なわけですから。

本当に、期待して観に行っただけにガッカリでした。walkerplusのユーザー平均点が、辛かった訳です。



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遠い空の向こうに

口直しに、とてもさわやかな宇宙物の紹介を。
貧乏炭坑町のダメ学生達が、スプートニクショックに触発されて、自作ロケット作りに挑む青春物。

ロケットで研究発表

女の子にモテる
大学の奨学金ゲット

ホワイトカラーの仲間入り!

と言う明確な目標提示が、時代の空気を良く表しています。ちなみに、原作「ロケットボーイズ」はNASAの技術者の回顧録。

原題が "ROCKED BOYS" で、映画が "OCTOBER SKY"。つまりアナグラムなのですが、日本語にすると訳がわからない題名になってしまうのが残念な所。

格差をぶち抜くライフプランが、説得力を持って受けいれられる時代…… 問題は矛盾の存在ではなく、それが乗り越えられるという期待が持てるかどうかにある、という奴ですね。
ちなみに、映画では明言されませんが、当時大学に行けない学生は、徴兵免除が効かずヴェトナム送り。「格差」は、一面洒落にならない巨大さだったりします。



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タグ :宇宙映画

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 九条小夜子(以下九) 「宇宙へ」っていう宇宙開発を描いたドキュメンタリー映画を観たんだけど、はっきりいって噴飯ものね!
 豊橋ミケ...
「宇宙へ」 宇宙開発史の不都合な真実?【小夜ミケのネタころがし】at 2009年09月10日 23:11
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