2009年09月20日

東京マグニチュード8.0 最終話感想


東京マグニチュード8.0 (初回限定生産版) 第1巻 [BD] [Blu-ray]
東京マグニチュード8.0


前回の続き。

最終話に来て、ようやく自宅の崩壊映像。第一話と同じ構図を使い、基本に忠実に演出していますが、手遅れ感多し。日常の崩壊は、最終話でやる話ではないでしょう。むしろ、今までの描写が観光地の崩壊ツアーだったのが問題なわけで。主人公の学校の描写も、第一話で学校の描写が薄く、今回のような構図の一致もなく、半端になっていましたし。

それにしても、画面が暗すぎるような。もっと明るくして、荒廃の細部を描写して欲しい所。

そして、悠貴の幻影は、演出方法として最低最悪。
前回のラストで、主人公の幻覚というのが解っています。ですから、今回のこれは、幻影との会話は主人公が行う自己の内面との対話に他なりません。
ところが、その会話内容は、悠貴が一方的に優しい言葉を話すという物。これじゃ、主人公はただの痛い子です。

再会の演出も、最初に主人公に「悠貴を守れなくてゴメンナサイ」の一言でも言わせておけば良いのに。
両親が、主人公だけでも生きていてくれてありがたい、と思っているのは解ります。ですが、弟を任せた長女が自分だけ生きて戻ってしまったわけで、葛藤がないのは嘘でしょう。何より、あの描写では、愛情を画面上で示してもらえない悠貴が不憫です。主人公の無事を喜ぶ描写は有り余っているのに、悠貴の死を悼む描写は、主人公以外にありません。

結局、主人公が自己内対話で自分を許してしまい、(悠貴の幻覚が口にする感謝とは、そう言う事です)周囲の誰も彼女を責めないと言うのは、余りにぬるい。
勿論、主人公を責めるのは、「現実的には」理不尽でしょう。ですが、物語としてみた場合、主人公の立場は、「一番守らねばならなかった弟を、守れなかった姉」です。ミッション・インコンプリートで最終回を迎えてしまったのです。
それを、「主人公が生きていただけでも幸運」と言う描写で固められては、10話も重ねてきたサバイバルは何だったのかという話になります。

物語で提示された初期の課題は、「二人が家まで生きて帰ること」。それが果たせなかった以上、相応のリアクションがなければ、話にならないじゃないですか。しかも、サバイバルの過程で、役に立ったのは主人公ではなく、圧倒的に弟です。だから、主人公の負債を清算するイベントと言う意味でも、納得の行くものを用意する必要があったはずです。

そして、弟からのメールをクライマックスにするのなら、悠貴の幻影は、この話で、少なくともあんな形で喋ってはいけなかったはずです。そうしなければ、生身の悠貴が残した言葉は余りに軽くなってしまいます。


何というか、この作品、見事なまでに失敗していますよね。
震災という大きなテーマを扱いきれずに持て余し、一番重要なキャラクターを殺してお涙ちょうだいで、強引に山場を作ったようにしか思えません。だって、結局悠貴の死は原因不明で、震災なんか関係ないですから。せめて、震災で医療が十分に受けられず…… と言うような程度の関連性すら持たせないスタッフは、アホなんじゃないでしょうか?

最後の学校の風景も、花瓶の置かれた机の多さを、もっと強調して欲しい所。

そして、正に最低としか言いようのない、「弟が死んで主人公は成長しましたよ」としか言いようのない、安易なラストシーン。もう、あまりのがっかり度合いに、溜息しか出ませんでした。

大体、あれは成長できていません。
どう言うことか?

決意するだけなら猿でもできます。問題は、それを実行に移せるかどうか。そして、物語の構成として、主人公は、悠貴の愛や自分の至らなさに気付き、関係を変えようとした所で、悠貴を失っているのです。

つまり、弟との関係を変えるという、成長のための目標は、達成できないまま不戦敗に終わっているんです。だから、あれを成長というのは、欺瞞でしかありません。家族のありがたみを知る?無くしたら、ありがたみが解るのは当たり前です。その前に知って守れてはじめて成長でしょう?あれじゃ、単なる焦土の正論じゃないですか。

作画を見る限り、お金もそれなりにかけてもらっています。個々の描写では良い物が多数ありましたし、「ちょっとだけ未来」の演出として、救助ロボも上手かったと思います。(ロボ好き少年は全くの無意味だったけど!)
それなのに、この始末。大体、たった11話で物語的に破綻させられるって、ある意味凄いですよ。本当もう、なんでこんな事に……




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この記事へのコメント
一番では無いですけど、ありましたがねえ。
パパ「えらかったねえ、お姉ちゃん。大変だったろ?」
ママ「良かった。生きててくれて。」
未来ちゃん「でも悠貴が・・・。ごめんなさい、あたし・・・。」って。
Posted by 名無し at 2009年10月15日 14:45
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