2009年09月30日

「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」 第3巻感想

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc3
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc3


1巻2巻の感想はこちらから

1巻が名作、2巻が推敲不足で残念という感想だった「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」ですが、3巻が出たのでその感想を。
刊行間隔が1→2巻の時と同じだったので、不安を持ちつつ読みました。

1巻同様、各キャラクターにきちんと出番を用意し、こなれた形で話を回していきます。いきなり大量のキャラを投入してとっちらかってしまった2巻の反省が、きちんと活かされていますね。

今まで影が薄い事この上なかった男友達も、ピンポイントで存在感を出しています。

「おいおい。デートにタキシードを着ていかないと、ダサいとか言って帰っちゃうヒロインもいるんだぜ?」

例の三作目ですね。タキシードじゃなくてスーツでしたが。あのシステムは、本当に酷かった…… 女性向けにクラスチェンジしたあとは、ちゃんと遊べるシステムに昇華されていましたが。


この作品は、「理想の楽園」であるギャルゲー世界が現実に投影された時に、両者に生じる割と痛めの軋轢がテーマです。今回最初に来る問題は、「進路」。
勿論、これがシナリオに組み込まれている作品も多いですが、描かれていない作品においては、大体「突っ込むと洒落にならない矛盾が生じる」デンジャラススポット。

あとは、ファッションセンス……って、W.L.O.(感想はこっち)と同じパターンかよ!
ちなみに、こちらの解決法は「親戚の女の子に教えを請う」でした。うわ~、嫌になるほど現実的~。教えてくれるけど馬鹿にされまくる所とか、主人公にシンクロ率が上がりすぎです。

一方で、1巻から続く根本的命題「誰を選ぶか」も、中々エッジな踏み込みが為されています。
これがいわゆるラブコメと違うのは、主人公の側に圧倒的な責任と引け目があるからでしょう。何しろ、主人公は彼女たちを「自分に好意を持った存在」として、現世に召喚してしまったわけです。従って、誰かを選ぶ=誰か以外選ばないと言うのは、恐ろしく身勝手な行為に他ならないわけです。一方で、「誰も選ばない」と言う選択肢が、もっと最低でなんの解決にもならないのも言うまでも無し。
これはギャルゲーという代物が根本的に背負う因果、または業。メタフィクションとは、こうでなくてはいけません。

ちなみに、その罪悪感は今「現実」にある人間関係としては不健全そのもの。その辺への突っ込みも、ちゃんとされています。
あと、最近では設定上存在感の薄い「社会」もろとも封殺されて省みられない、近親相姦のタブーがらみも。そう、「障害」は本人達の気持ちなんでものではなく、周囲の、社会の目線。って言うか、社会的属性に基づく障害が、社会的な物以外であるわけがないんですよ。この辺は最近とんと描いてくれるシナリオが少なくて残念に思ってましたが、ちゃんと扱ってくれて嬉しい限り。

おまけに、ロリキャラが自分の不自然さを嘆きつつ主人公に選択肢を突きつけるシーンなど、鳥肌が立ちました。ぶっちゃければ「抱けるのか?」と言うお話ですが、リアルワールドで突きつけられると、本当に洒落にならないクリティカルブロー。モニターの向こう側と違いますので、"of course!"とか選択肢を選んで、あとは笑いながら見ているわけには行きません。そもそも、ゲーム中の「設定を忠実に反映」していた場合、成長障害という業を彼女に背負わせた事にもなるわけです。二次元と三次元の交錯が、タイムファンタジーにも似た悲喜劇を生み出す一瞬。ああ、もう、素晴らしいったら!

ちなみに、この部分については最終盤にある回答が出るのですが、それを見て「どれがフラグになったんだろう?」とか考えた私は完璧なギャルゲ脳。だって、物理法則も過去の事実も、主人公の選択一発で変化しちまうのがギャルゲーってもんじゃないですか!
でも、キャラ属性的に、あのイベントは攻略対象外へのシフト宣言じゃないかと思うんだ。(最低)

ちなみに、一点だけ意地悪なことを指摘すると、設定上「リアル」を意図的に弾いている部分があります。
それは、ヒロイン達のセンス。一応、合法ロリキャラが浮いてしまうと言うのを1巻でやって居ますが、それ以外も突っ込むとマズイ部分があるのです。例えば、主人公は自分のファッションセンスの無さに悩んでいますが、ギャルゲー世界のヒロイン達は、それに輪をかけて酷いはずなのです。また、ヒロイン達のアニメ顔も、そのまま三次元に移すと、美人とは言い難くなるはず。
この辺まで「リアル」にすると、痛さレベルがさらにアップし、現実の風圧に主人公とヒロインが滅茶苦茶にされる話にできるはず。ですが、まあそんなことされても誰も幸せになりませんしね。


閑話休題、この巻は2巻読了時の引っかかりを感じさせない、できの良い一冊でした。
設定のとっちらかりは相変わらずですが、重要な部分はきちんと伏線が活きていますし、エンディングで上手くまとまっています。
文章の乱れにしても、露骨に引っかかる所はありませんでした。あるいは、本文の勢いで気にならなかっただけかもしれませんが、どちらにせよ好内容なのは間違いないでしょう。

きちんと次につながる伏線(シナリオ起動問題)と、未解決の課題(咲と理恵)を提示していますし、次巻以降も期待大。ワクワクしながら続刊を待ちたいと思います。

ところで、ギャルゲネタについては、もう少しパロディの作品名などを仕込んで、マニアックに行っても良い気がします。まあ、それをやるとシナリオラインが割れたり、色々引っかかってくるので仕方ないのかもしれませんが。
でも、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の4巻(感想はこちら)程度のは、仕込んでもいいと思うんですよ。少なくとも、翔也のセリフ中でくらいは。だって、これを読んでいる連中は、そう言うのを喜ぶ層に他ならないはずなんですから。

しっかし、今回登場の某氏の運命には、羨望と哀切を禁じ得ません。これは、一定年齢超えた読者共通の思いなのでは?
良く、年収一千万円無いと結婚できねえならリアル女なんぞ要らねえよ!と強がるオタクがいますよね。でもお前、大好きな萌えキャラに「年収一千万円あったら結婚してあげる」とか言われたら、迷わず「血を吐きながら準備OK」って感じで、ガンパレードマーチ歌いながら仕事とか起業とか頑張っちゃうだろ!?ってな事を、常々思っていたり。
まあ、実際読んで見て下さい。

以下、関連動画(笑)






この作者の、他の作品に関する感想はこちら






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