2009年10月26日

「紅」 醜悪祭(上下) 感想

紅‾醜悪祭 上 (集英社スーパーダッシュ文庫 か 9-6)紅‾醜悪祭 下



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と言うわけで、2巻で思い切り印象を悪化させてくれた、片山憲太郎の「紅」、今の所の最新刊を読了しました。

3巻の上下かと思ったら、3巻が上、4巻が下という扱いなんですね。ちょっと不思議なナンバリングです。

さて、内容ですが……

オタクですから、中二設定も願望充足的なあれやこれやも、大好物でございます。ただ、これらは甘味みたいな物なので、使い方次第でゲテモノ料理となるは必定。

本当に、相変わらず恩知らずで身勝手な主人公。冒頭からして、銀子はぶち切れて良いレベル。
自分に向けられた善意や好意を平気で無下にして恥じることもない、絶対に友人になりたくないタイプです。

こう言ってはなんですが、主人公は非常に蔑称としての「オタク」そのものなんですよ。マトモに人間関係が結べないのを、自己陶酔的な諦念と世界への違和感に置き換えて悦に入る、どうしようもない奴。当然ですが、魅力のミの字もありません。

そう考えると、1巻から引っかかっている、作品世界の無意味な凶暴さも理解できそうです。要するに、人間関係が構築できないという設定を正当化するために、周囲の世界を関係構築の価値がない、またはリスクが高すぎる物として描く。ブンガク的に表現すれば、受け手の世界からの疎外感を象徴する設定であり、若者の孤独と万能感がうんたらかんたら。何にせよ、最悪の意味で中二臭い代物で、鼻が曲がりそうになります。
大体、主人公の場合、不浄な世界に属さないはずの紫に対してすら、マトモに会話できてないですからね。話をはぐらかしたとか、質問に質問で誤魔化したとか、そんな描写ばっかりです。

これに、話を引き延ばすための、「主人公が報告・連絡・相談を他のキャラクターに行わない」という毎度のパターンが加わると、どうしようもない物語一丁上がりです。

ええと、それと、多分皆さんは知ってたんでしょうけれども、何この文章……?

いや、なんかこの巻の刊行について、色々ゴタゴタがあったらしいと言う話は聞いてました。ですが、作品そのものについては何も聞いていませんでした。ところが、校正という仕事の存在を疑いたくなるこれは、一体なんですか?
改行が一切無しで続く文章とか、あり得ないでしょう!?ちなみに、単に改行がないのではなく、「」でくくられたセリフ部分ですら、そのままつながっているのです。ちなみに、意味は、多分無いと思います。一応、その部分が回想シーンだと言う事を示したかったのかもしれないのですが、単なる悪文。編集者が止めないわけがない代物です。

他の部分、特に地の文は相当酷い事になっており、まるでト書きのような状況の箇所も大量。こりゃあ、見切り販売なんて言う生やさしいものじゃありません。


そして、下巻の最後については……
ああ、なるほど。こんな終わり方だったんですか。ハハ、聖闘士星矢の最終回思い出しましたよ。完璧な打ち切り漫画状態。そして、頁あわせにアニメの脚本と下らない資料もどきを収録。結末はファンブックで!と言う形です。なんと、下巻の実質ページ数は120程度。
こりゃ古本屋に単行本が山為すはずです。小説として、商品として形になってません。食堂で例えれば、生煮えの料理出して営業停止のレベルです。これは、続刊が出ないのもむべなるかな、ですね。ここまで馬鹿にされてついていくファンが何割いるか。

ちなみに、下巻の内容自体ダメダメなので、本当に何一つ褒めようがありません。
開始と同時に上巻のラストをひっくり返しておいて、十数頁後に同じ展開をもう一度繰り返すなど、まるでなってない迷走ぶり。主人公がますます馬鹿に見えるおまけ付きで、頭が痛くなります。

書店の棚に、並んでファンブックが置いてあったのは、そう言う事ですか。どうせ良くある設定資料だろうと思ってスルーしたんですが、一緒に買ってくるんだった。いや、買わずに済んだことを喜んで、とっとと古本屋に叩き売るべきか……

まあ、面白そうな物が見えたら、「面白いらしい」以上の情報は仕入れずに手を出すのが信条なので、こう言うことはままあります。
でも、結果としてこの作品最大の特徴である「醜悪祭下巻を読んだ時のガッカリ感」を味わうことができたわけなので、まあ良しとしておきましょう。ファンと話す時にも、共通ポイントが見いだせそうですし。

P.S.
立ち読みできる本屋を探すのも面倒だったので、適当に検索してみましたよ。
とりあえず、絶奈との勝負は引き分けらしいです。

あ、そう……
って言うか、ま~たあれだけの悪役出しておいて、美形無罪で生かすんですか。世界は汚い汚いと言って、自分では直接的に襲ってくる悪人一人殺せないとか、主人公の偽善者ぶりに、いい加減突っ込んでやるべきじゃないですか?あいつ、別に苦悩して不殺の道を選んでるわけじゃなくて、単に手を汚したくないだけだもんね。
で、世界が優しくないとかほざきながら、周囲には自分を甘やかしてくれる女性ばっかり集まってる。素晴らしいですよね。
そして、口では甘えたくないと言って、やる事は単に協力求めないで状況悪化させるだけ。ここまで「ひどい意味での」中二病は、殺処分が適当なんじゃないかという疑いが湧いてくるほど。

そして、後は本当にエピローグ、しかもプロットのみとのこと。
ハハハ、あの編集ならやりかねないだろうね。目に浮かぶようだよ。

とりあえず、もともと編集能力が低いと思っていたレーベルだけに、スーパーダッシュ文庫は以後地雷原として基本回避で。勿論、作者も同様。半分は被害者だと思いますけど、「そう言う阿呆な提案を飲んでしまった前科」は、こっちも考慮に入れざるを得ないわけで。

ただ、評判の良い「電波的な彼女」だけは、読んで見ようかと思っているのですが。



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