2010年01月14日

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 5巻 感想

俺の妹がこんなに可愛いわけがない 第5巻
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 第5巻


色々ラノベは読んでいたのですが、読む本読む本外ればかりで、泣きたくなっていた所に引いた当たりがこちら。
伏見つかさの「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」第5巻です。

2010年10/5 追記:他の巻やアニメ版の感想はこちら

やっぱり、人気シリーズの続編は安定していますね。本当は、新規のものを開拓できてこそ一番嬉しいわけですが、(続編は、期待のために閾値が上がりますし)まあそっちの方は死屍累々だったので……


この巻は、ライトノベルとして非常に優等生的な内容になっています。デフォルメされたキャラクターと、等身大の悩み。そして軽妙な会話劇と場面転換。お手本どおりで、リーダビリティは最高。あっという間に読破できます。

さて今回の特徴として、妹が最後の最後まで出てこない事が上げられます。しかし、色々「固まり」すぎてもう動かしようが無くなっていたキャラクターですから、これは大正解。前回の感想で指摘したとおり、妹と主人公の関係はもう変えようがないと宣言済なので、ラノベのキャラとしてはメインを張れないわけですから。
従ってこの扱いは必然。そして作者はその中で、最大限に妹の存在感を活かしています。銀河英雄伝説の3巻以降におけるキルヒアイスの扱い、と言ったら解りやすいでしょうか?まず、妹がそこに「いない」事によって起きる、キャラクターの行動パターン変化を丁寧に描いています。
さらに、「妹ならどうするか」「妹がいてくれたら」「妹との経験を応用して」と言った、居ない事によって際だつ存在感を存分に強調。そもそも今回起きてくる小事件は、妹が居ない事に起因するわけで、徹底しています。
この描き方、本当に見事です。

新キャラにしても、作者が前にガンガンオンラインで書いていたとおり、欠点を可愛さに転化するメソッドが効いていて、安心して萌えられる良キャラクター。お兄ちゃんとセットで美味しくいただけます。ゲーム部部長は既存キャラと被ってしまっていますが、使える場面が異なるので仕方のない所でしょう。クソゲーマーという点を押し出すと差別化できそうですが、そうすると平野耕太の「進め!聖学電脳研究部」の部長になっちゃいそうですし。(それはそれで、十二分に面白いしと思うわけですが)

ただ、やっぱり、主人公にいつもくっついている幼なじみについては、ちょっと気になる所です。もともと妹ルートに分岐しないための安全弁みたいな役割でしたが、黒猫ルートが見えてきた事で物語の盲腸と化しています。何しろ、最初から役割のないキャラでしたし。一応、主人公が妹に巻き込まれる世界との対比で「日常」担当だったのでしょうが、非日常に踏込んで行くのが物語の王道。「行きて帰りし物語」は、ラノベでは好まれないわけで。

勿論、黒猫ルート(と言うか、主人公が本来の日常から離脱する事)が名実共に決定的になった所で、イニシエーションとしてふられるイベントがあれば、一気に役割が明確化しそうですが。でも、善人過ぎる設定なので、イベントが上手く機能しなさそうなのが何とも……

後は、ラストの展開ですかね。妹は、今回画面外に置いていた事で見事に存在感を発揮できていたわけで、舞台に引き戻すのはどうなんだろうと思ってしまいます。この辺、作品のアイデンティティにも関わってくるので、難しい所ですよね。

何にせよ、前巻と違って引っかかる点も少なく満足がいくまで楽しめたので、次巻以降も楽しみに待ちたいと思います。前巻と執筆期間は変わらないはずなわけで、やっぱり水物ですよねえ。




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