2010年02月03日

ヒロインを「攻略する」と言う事 不幸につけむばかりでいいのか

このエントリーにはいくつかの作品のネタバレが含まれます。どうせ古いゲームがほとんどなので、気にする必要もないとは思いますが。


二次元でも三次元でも、攻略対象のトラブルは、絶好の好感度アップチャンスになります。と言うか、二次元におけるギャルゲシナリオは、ほとんどがこれですよね。好きな相手を助けられるというのは、プレーヤーに奮起を促し共感を呼ぶ展開です。

けれど、それは結局、相手の不幸を願う事にならないか?

それが、本エントリーの主眼になります。

要するに、シナリオ上におけるヒロインのトラブルは、相手に「自分」をアピールする機会です。ですが、そんなトラブルは発生せず、ヒロインが主人公の助けなど必要としない状態が、もっともヒロインにとって幸せです。

これは、「ひぐらしのなく頃に 礼」で、非常にいやらしい(最上の褒め言葉)やり方で提示されていましたね。何かに対抗するための関係なら、そんな関係が必要ない方が幸せ。
ひぐらしなど、部活メンバーは圭一による一方的な救済にならない、相互扶助関係です。ですが、「お互いを助けあう」必要がある段階で、やはりこの業からは逃れられない。
相互扶助なら吊り橋効果、そうでなければ弱味つけ込みと、どちらにせよあまり健全な恋愛関係とは言えません。

健全な恋愛関係なんか、仮想現実で描いても楽しくない、と言うぶっちゃけは一旦置きましょう。我々が、そんなに彼女たちの事を嫁だ愛だと讃えるのなら、そんな不健全な関係しか築けなくて良いのでしょうか?
繰り返しますが、不健全な方が面白いと言う事実は、確認するまでもありません。しかし、相手を不幸に落とした結果として享受する面白さと言う物に無自覚なのは、二次元を愛する人間としてどうなのか?

勿論、多くの物語は、こんな事を受け手が考えなくても言いように組み立てられています。ですが、長年ゲームに限らず物語に付き合っていれば、気づいてしまう事は多くなるわけで……

しかし、それを乗越えているように見えるゲームというのも、また多く存在します。

ときめきメモリアル4
ときめきメモリアル4

例えば、現在のギャルゲー市場の成立に大きく貢献したときめきメモリアルは、その立場にもかかわらず現在主流のギャルゲーとは一線を画しています。それは、あの時代主流だった「攻略」するゲームの系譜上にあるからです。
このゲームにおける「攻略」は、自分を鍛えてヒロインの要求水準を満たす事です。そこに、主人公がつけ込むべき「隙」はありません。彼女たちは最初から最後まで、要求水準を変えません。「水準に近づいた」と言うシグナルのデレはあっても、そんな物語上の展開とは無関係にエンディングは決まります。何度恋人だと思い込んでいた藤崎に、手紙をもらえず涙をのんで卒業式から帰宅したか……
これは、ドラマ・物語部分はプレーヤーの想像に委ねられ、あくまでもシミュレーターとしてデザインされた故ですね。これは、上記の4まで一貫しています。



ONE ~輝く季節へ~ Vista動作確認版
ONE ~輝く季節へ~ Vista動作確認版


これ、2007年になってまで再販して、売れたのかなあ……
と、心配したくなる「ONE」ですが、このシナリオはKey以後とは少し異なっています。
KANONにせよAIRにせよCLANNADにせよ、基本的に物語上万能になれる主人公(AIRについては、過去編以降は主人公不在、または主人公が母親に移っていますが)が、女の子を救済する話です。ヒロイン達には弱点が設定されており、シナリオの進行と共にそれが顕在化。主人公が課題を解決してあげる事で、好感度を回収します。
まあ、最初からヒロイン達は好感度全開な気はしますが、少なくとも「落ちる」きっかけとして、トラウマ発動は通過儀礼になっています。

ですが、実は出世作であるONEの段階では、構造は逆になっています。
問題を抱えているのはあくまでも主人公であり、ヒロインの誰かに自分を「救って」もらわねば、世界から消え去る運命です。障害者ヒロインなどと散々揶揄されましたが、実はKANON以降の方が、よほどヒロインは「弱者」なのです。主人公に救われる事なしに、問題を解決できないのですから。(だからKANONに対しては当時された、「攻略されなかったヒロインはどうなる!?」と言う批判は、かなり本質に迫る物と言えるでしょう)
つまり、ONEの段階では、物語最弱は主人公で、ヒロイン達はその主人公を救う可能性のある「強者」だったのです。しかしこの関係性はKANON以後逆転し、デファクトスタンダードとしてずっと続いています。


リトルバスターズ エクスタシー 通常版
リトルバスターズ エクスタシー 通常版

あれだけ批判した手前、貼り付けるのはPC版にさせていただきます。
そして、ここに来てやっとどこか不健全な(プレーヤーが「引っかかって」しまう)関係性から抜け出す兆しを見せたのが、リトルバスターズになります。
リトルバスターズの場合、個別ヒロイン達のシナリオは相変わらずです。小毬の絵本が端的に語っているように、主人公である理樹の役割は、各人のトラウマ・思い残しの解消。同工異曲で安心感はあるものの新しさは無し。個別ルートが微妙、と言われるのも構造的に仕方のない所でしょう。
しかし、そうしていつものとおりよろず・トラウマ解消業に精を出しているプレーヤーは、REFRAINで頭を殴り飛ばされる事になります。
つまり、「救われていたのは主人公の方だった」と言う転換ですね。ここで、関係性の逆転が起こり、高所からヒロインを見下ろして「救ってやって」いたプレーヤー(個々人がそう思っていると言う事とは関係なく、物語の構造として)は、衝撃を受ける事になるわけです。

しかし、ここで一つ煮え切らないポイントが発生します。
どこかというと、主人公「が」救うのがヒロイン達であるのに対し、主人公「を」救っているのは、主に馬鹿三人組だと言う事です。
主人公一人で見れば、救い、救われて±ゼロ。関係性は整理されているようですが、それは+と-を別々の所から調達しただけ。ヒロインの危機につけ込んで「落とした」事は変わりません。それどころか、三馬鹿への「借り」は、最後に彼らを救ってみせると言う事で返している一方、鈴を除くヒロイン達には更なる「貸し」が発生します。

また、いくつかの場面で語られる、ヒロイン達が主人公理樹を好きになった理由も、すべて彼らの持つ「問題」(ほとんどが「疎外」ですね)がらみ。対等な恋愛関係かと言われると、かなり疑問符が付きます。

つまり、リトルバスターズにおいてすら、対等な「友情」については描ききる事に成功しているのですが、恋愛はやはり放擲されたままなのです。

とは言え、閉塞しつつあるパターンから抜け出そうとする試みは高く評価したいです。私がリトルバスターズを物語として高く評価しているのは、これが大きい。

と言うかですね、十年以上前にONEであれだけの衝撃を与えてくれておいて、KEY以後は微温的あるいは幻想の家族礼賛へと沈み込んで行ってしまっていたわけですよ。業界のトップ集団が、方向性を変えようとあがくのはとても見応えがあると思います。


まとめると、
「どうにもギャルゲにおけるヒロイン攻略の描き方には、不幸につけ込む引っかかりがある」
「萌えてる我々は、もっと真摯にヒロインの幸せを願うべきではないのか?」
「その引け目を回避する、シナリオパターンの挑戦がもっとあって欲しい」
と言う風にまとめられるかともいます。


今回はKEYに絞っていますが、多くのゲームがこの罠にはまっているように思えるんですよね。
人外ヒロインや主人公を振り回す系統も、結局は日常から疎外を背負ったヒロインを、主人公が「救ってやる」(あるいは、「つきあってやる」)と言う形になってきますし。ハルヒなんか、これに近い構造と見れます。




あ、もしONEやときメモをプレイした事がない人がいるならば、今すぐネットなんか見てないでプレイしてみろ、と言いたいです。勿論現在プレイすると色々悲惨なのですが、数時間耐えるだけでも、当時何がそんなに衝撃だったのか野片鱗は見えてくるでしょうから。
なお、アフィリエイトを貼り付けておいたなんですが、ときメモならPSP/PS3のゲームアーカイブスがおすすめです。600円でプレイできますから。ONEは…… あれこそ、PSPでプレイできればいいと思うんですがねえ。素人に起動方法が提示されてたりしますし……

少なくとも、クレジットカード決済があるのですから、PS3でアダルトゲームとか売ったら、結構出ると思うんですけどねえ。所詮あれはホームコンピュータなんですから、PS3上で動くパソコンのエミュレーターを公開して、外部サイトで売れるようにしてマージン取るとか、色々方法はあると思うんですが。



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