2010年02月26日

今後の展開やや不安「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」4巻感想

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc4 (ファミ通文庫)
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc4 (ファミ通文庫)

前巻までの感想はこちらから


すっかり忘れていましたが、4巻も読んだのでした。と言うわけで、感想を。

今回、物語は終盤に向けて「仕込み」の段階に入ったようです。「ギャルゲヱの世界」を呼び寄せたプログラム(?)に関する伏線が多く張られ、色々と設定が見え隠れしてきます。
素直に考えれば、あの世界自体がヴァーチャルなのでしょうが……

一方、この巻自体のテーマは、またしっかりした物を持ってきています。
それは、ずばり「好感度稼ぎ」。
それのどこが「しっかりした物」だ!と怒られそうですが、まあ聞いて下さい。

まず、あの世界は主人公の願望が投影された世界で、周囲の女の子達は、一名除いて全員「主人公に都合の良い」初期パラメータを与えられています。しかし、それ故に、恋愛物としてみた場合、最初から「話にならない」事になります。なぜなら、全員が主人公に「理由もなく好意を持っている」事になるからです。
勿論、主人公はこれまでの巻で彼女たちの行為に値する事を示し続けてきたナイスガイですが、それは文字通り「後付の設定」に過ぎません。最初から与えられていた「理由のない好意」は、清算されないまま負債として残ってしまっています。

しかしこの巻で、主人公は「主人公」の地位を奪われ、全ての設定をリセットされてしまいます。そして、実力でヒロイン達にアプローチし、「主人公」の地位を奪い取るしかない状況に追い込まれます。
これは、物語として非常に巧みです。序盤で不問に付された「主人公への好意」を、直接作り出していくわけですから。初期状態がラブラブで、中盤で突然「なぜ惚れたか」の回想シーンが入るシナリオが良くありますが、あれよりもはるかに上手いです。何故なら、読者は主人公と一緒に、設定を作って行く事ができるわけですから。
ただこれは、本来「主人公=プレーヤー」であるギャルゲーでやってこそ力を発揮する方法でしょうね。読書の場合、ゲームプレイと違って、読者はあくまで読者になってしまいますから。

閑話休題、この巻は、主人公がお気楽萌えゲーのそれではなく、初期ガチンコ系ギャル”攻略”ゲーの主人公にクラスチェンジする話、とも言えるでしょう。彼が取るアプローチも、見事なまでに接触してフラグを立てる、初期ギャルゲー(同級生とかの系統)フォーマットです。
勿論、このアプローチは全く「リアル」じゃないわけですが、「ギャルゲヱの世界」としての世界観を貫徹させる、完全に「正しい」描写です。本当、上手いですねえ。


と言うわけで、基本的に感心して読んでいたのですが、「物語の中盤」故の問題がありまして……
要するに、「主人公は誰も選ばない」と言う事です。これは商業的にこの段階でヒロインを決定してしまうわけには行かない、と言う事もあるでしょう。しかし、リセットされた設定の中で「全員の」好意を集めて回る主人公は、悪質なジゴロにしか見えません。あまつさえ、口説いている相手に”お前以外にも好きな相手が居る”と言って回ると言うのは、ありえません。二次元でも三次元でも、完全なフラグブレイクなわけで、あそこで、どちらのリアリティもまとめて吹っ飛んでしまいます。

もう一人の主人公の言う、「全員を幸せにできるわけがない」と言うのは、真理なわけですし。
と言うわけで、主人公がとっとと誰を選ぶか結論を出してくれないと、次巻以降も酷い事になると思います。戦略目標が定まった後の展開は毎回きちんと盛り上がりますし、イベントの組み方も手堅くて面白いのですから、こう言う展開上のもたつきはガッカリしてしまいます。

まあとにかく、次巻以降に期待です。あと三巻くらいですかねえ?
少なくとも、次巻以降は一人ずつでも、ヒロインを「切って」行く必要が出ると思います。主人公も何度か自覚しているとおり、結論を出さずにダラダラ引き延ばすのは残酷でしかないわけですから。
あ、なんかこの巻であり得そうに思えてきて不安なのですが、ハーレムエンドを目指さない事を祈ります…… リアルと二次元の融合と相克がテーマの作品で、それだけはやっちゃいけない展開ですから。二次元の論理が貫徹してしまい、リアルを被ってしまえば、ギャルゲーの世界と対称な存在としての「リアル」を舞台にした意味が、無くなってしまいますから。



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