2010年03月16日

都条例継続審議 最悪の事態は回避し、ここからが本番

何だか、アクセスカウンターが見たこともない値を示してます。普段の五倍以上、児ポ法改正論議の時の二倍くらい。
騒ぎが起きる度に、以前の騒ぎで注目していた層に加え、新規で上方に接した人が入って来ると言うことですかね。
この注目(うちのページではなく、表現規制問題について)が瞬間風速ではなく、毎回コンスタントに集まるようになれば、規制もそう簡単にはできなくなっていくでしょう。

さて、凄まじい反応に押されて、都議会の民主党が重い腰を上げました。青少年健全育成条例を考える会の抗議(リンク先は、保坂元議員のリポート)なども、効いたのでしょうね。


都議会の民主、継続審議を検討 児童性描写規制案

要するに、「児童ポルノが悪いのは当たり前でしょ?議論なんか必要ないよね」と通そうとしていた自公に対して、NOを突きつけたわけです。共産・生活者ネットは元々青少年育成条例の強化に反対してきた党ですから、この動議はまず通るでしょう。

そして、議会の過半数が「議論を深める」と決めれば、原案通り可決はあり得なくなります。内容に懸念があるとして議論を始め、何も修正させずに終われば、「無駄に騒ぎを起こしただけ」と言う事になり、賛成派からも反対派からも叩かれることになるからです。従って、例え民主党が原案どおりで良いと思っても、何らかの「懸念をはらすため」の修正を入れねばメンツが立ちません。


さて、今書いた内容から容易に想像できると思いますが、本番はここからです。
とりあえず、今後の展開は、以下の線分図で表すことができるでしょう。


 (最良)          ←良      (中間)      悪→             (最悪)
  廃案     一部条項削除     継続審議     濫用防止条項追加     付帯決議のみ


理想は廃案ですが、これは結構難しくなります。規制派は、デマそのものですが「青少年が悪くなっている」、「悪質な表現物の悪影響がある」と主張しています。この前提は、完全無欠のデマですが、行政にとって都合が良く、口当たりの良い俗流若者論・文化論に則っています。つまり、「そう言う事にしておいた方が良い」、「そう言っておくと受けが良い」話で、この前提に立つ限り、「何もしない」(=改正案廃案)は難しくなります。

勿論、議員さんへの手紙には「廃案にしてくれ」と書くべきですし、私も書きました。しかし、それを当たり前の結果として期待するのは、都合が良すぎます。

最悪は、言うまでもないですね。「表現の自由に配慮する運用を望む」と言った、付帯決議だけで通してしまうパターンです。付帯決議など条例に書かれているわけでもなく、警察にとっては屁でもありません。無条件降伏しておいて、「せめて部下の待遇は丁寧にして下さい」というような物です。相手にそれを守る義理はなく、守らせる方法も存在しません。

悪い方に書いてある乱用防止規定は、元々この条例案自体が濫用するための曖昧な定義ばかりですから、意味がありません。例えば、秋葉原(私は、むしろ新宿で良く見かけましたが)刃物狩り点数稼ぎで有名な軽犯罪法は、第四条で以下のような規定を置いています。

>第四条  この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。

勿論、警察はこんな物を尊重しちゃいません。大体、法文がきちんと尊重されるなら、職務質問が「任意」でないわけがないですよね?都合の悪い規定は無視され、都合の良い規定は悪用される。と言うか、そう言う歴史上の教訓を経て、「あいまいで良いように解釈できる法律は作ってはならない」という原則が、法学の基礎になっているわけです。

ですから、上記軽犯罪法のような規定を置くのは意味がありません。表現を潰すのは簡単で、「条例違反になりますよ」と言う言葉と共に、出版者や団体に電話をかけるだけで良いのです。あるいは、逮捕した上で脅しをかけ、起訴猶予にでもしてやれば規定違反は表に出ません。歯止め規定が意味を持つのは裁判所に行ってからですし、逮捕された段階で人生は終了です。


従って、これから重要なのは、危険な条文をどれだけ削れ、あるいは完全廃案にどれだけ近い所まで条例を追い込めるかです。
現状の「議論を深める」と言うのは「うるさい奴らが沢山いるみたいだから、配慮したって姿勢は見せておこう」と言うレベルでしか無い可能性も高いのです。
ですから、この条例が6月過ぎにどうなるかを注目しておき、風向きがおかしくなってきたら叩き、良さそうなら激励する、と言うフィードバックを行うのが重要になります。

具体的には、これからの審議で、良いことを言ってくれた議員さんには、激励の手紙を書いたり、カンパをしましょう。妥協的なことを言った人には、やんわりと(ここ重要です。罵倒したら、迷っている味方は完全な敵に回るでしょう)抗議する必要があります。
逆に、自公の議員さんに弱気な発言や妥協的な物言い(正直その部分については私もどうかと思う、と言った)があれば、賛同したり、「本当に良い条例にするため、今回のは……」と言った手紙を送りましょう。後者は、元々自公の支持者で、今回の事があったからと言って、民主や共産を応援するのは嫌な人にお勧めです。

とりあえず長丁場になると思いますので、ニュースのキーワードを設定しておくなり、大手の規制反対派サイトをブックマークするなどして、何かあったら行動できるようにしておくと良いと思います。マラソンではないので、動きが少ない時には日常生活を普通に送り、疲れてしまわないように注意して。


本当、完全廃案にできたら、画期的な「勝利」になるんですけどね。
修正で通過させた場合だと、「勘違いして抗議してきた連中は多かったですが、説明したら皆さん解って頂けました」みたいなプロパガンダに使われてしまうのが、いつものパターンなので。


言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)
言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)

最近読み返した本。戦中言論統制の大物・鈴木庫三を擁護した一冊ですが、読んで痛感するのは、規制側の理想や善意は、文化の荒廃を全く正当化しない、と言う当たり前の事です。
前にも書きましたが、私は規制派の使命感や理想、真剣さは否定しませんよ。ただ結局の所それは、「快楽殺人鬼に殺されるのと、使命感に燃えるテロリストに殺されるのは何が違うか?」と言う話でしか無いわけで。



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「非実在青少年」を盛り込んだ表現規制条例、採決先送りに【虹萌え遙なり】at 2010年03月18日 01:49
この記事へのコメント
質問したいことがあるので、コメントさせていただきます。

「あるいは、逮捕した上で脅しをかけ」と書かれましたが、私の知る限りでは今回の条例案で制作、あるいは出版した側が処罰の対象となる規定はありません。(現行条例にもあるように不健全図書を売る側が勧告に従わない場合には罰則もある)
お手数ですが、逮捕するという根拠を示していただけないでしょうか?
あるいは、別件逮捕の事を差しているのでしょうか?

差し支えなければお教え願います。
Posted by slpolient at 2010年03月17日 19:20
ああ、直前で「出版者や団体」と書いているので勘違いされたのですね。逮捕を喰らう恐れがあるのは、勿論、即売会主催団体や書店・通販サイトです。

出版者だけがその手段を被らないと言う事は、何の助けにもなりません。流通に取り扱いをやめさせれば、出版側が何を作ろうが関係なくなります。と言うか、そう言った流通(販売者・販売場所)が潰されるからこそ、反対が為されているわけで。

罰則が30万以下の罰金だから、任意同行を拒否しない限り逮捕にはならない、と言う話なら、厳密にはそうですね、と答えるしかないですが。
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年03月17日 23:22
そういうことですか。確かに現行条例にも書かれていることですからね。
ありがとうございました。
Posted by slpolient at 2010年03月18日 07:05
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