2010年03月27日

『夏に奏でる僕らの詩』 ファーストインプレッション

夏に奏でる僕らの詩
夏に奏でる僕らの詩

とりあえず、第四話までクリアしたので、簡単な感想を。

この作品は、隠れた名作「てのひらを、たいように」(リンク先はPS2版。限定版の方が安いのは、売れなかったゲームの宿命)の、良い方の半分を担当したシナリオライターさんが、メインで参加しているギャルゲーです。

内容は、離島を舞台に、数年前に海で行方不明となった女の子と、それ以来疎遠になっていた幼なじみ達が、島に「帰ってくる」ところから始まるという内容。ええと、みずうみ?と言う、ブラッドベリな展開が一瞬頭に浮かびますが、多分気のせいです。クトゥルフでもありません。多分。

何にせよ、田舎町(離島)舞台で周りは全員幼なじみ。そして夏。上記作品の系譜であることは確かでしょうから、色々と期待が持てるわけです。
ちなみに、その全員と疎遠になってしまっているという所も、同じだったりします。

画面は、結構すごいです。背景がアニメーションし、グリグリ動きます。砂浜には波が寄せては返し、海上ではうねりがきらきらと輝き、差し込む光は一瞬毎に色彩を変えます。
手法としては、背景の壁紙にムービーを投影する伝統的な奴だと思いますが、普通は手間とコストがかかりすぎるので使われません。こりゃ気合が入ってます。

ただ、使われるのはあくまでも海が出てくる所だけみたいですね。石畳から立ち上る陽炎とか、街路灯の下で舞い飛ぶ蛾とかを期待したのですが、その辺はコスト的に手が回らなかったのでしょう。仕方ない所ですが、アニメーションする背景のシーンが素晴らしいだけに、普通の背景が貧相に見えてしまったり。

あ、画面と言えば、ウィンドウ上部に、そのエピソードのタイトルが常時表示されているのは、結構良い感じ。




さてシナリオですが、当初再開した幼なじみ達はみな主人公を避け、仲良くなろうとすると「何が起きるか解らない」と言って身を引きます。五年前に一人が行方不明になった時のゲームで彼女たちが賭けていたものが、主人公なのは自明。となれば、五年前のゲームで勝利したのが行方不明になった女の子であり、海中に沈む遺跡に絡む呪い(のろい/まじない)が絡んで来るであろう事まで、予想が付いてしまいます。
ちょっとこの辺、伏線が露骨すぎるかなあと。五年前に彼女たちの内一人が行方不明になった、と言う情報だけに絞っておいた方が、活きたんじゃないかと思います。

……などと思いましたが、一話の終わりで行方不明の幼なじみは何のタメもなく幽霊となって登場。つまりは、このお気楽幽霊と再開した幼なじみ4人による、ほのぼの夏休み物と成るわけです。

まあ、その辺のほのぼのした日常の描写が売りのライターさんですから、これは路線としては正しい、のかな?オカルト設定がちょっと勿体ない気もしますが、浸っていたい幸せな夏休みの光景は健在。キャラが多すぎてごちゃごちゃしそうな所は、吹き出し状の画面演出を使って情報を整理していたり、なかなか巧みです。

ただ、シナリオライターさん、欠点もそのままなんですよねえ。
盛り上がるべき緊急事態における主人公達が、「どう考えてもそうなると解っているのに対処しない」「優先順位の整理が出来ず状況を悪化させる」と言う、読者を一番苛立たせるパターンになってしまっています。

「てのひらを、たいように」で言えば、時間制限があるのに対策も考えず、状況が破綻するその日までのほほんと過ごすありえなさ。今回で言えば、シャワーが浴びたいとか言って隠れ場所から出ていく愚かさ。ついでに言うと、月下美人の咲くタイミングを考えれば、咲かなかった場合、夜明け頃に一時撤退すれば良いだけなんですよ。と言うか、咲かなかった場合のプラン自体が無いって、どう言うことなの?

その後のにらみ合いにしても、本当に作戦の1つも立てない。オロオロしているだけ。
作戦があれば、読者の側はそれが成功するかどうかでハラハラする事が出来ます。しかし、何もなく、ただ事態の推移を見せられるだけなら、例え状況が好転してもご都合主義にしかならないじゃないですか。
最低限、人質交換に応じるふりをして、人質(物だけど)が開放された瞬間襲撃をかけるとか、交渉に見せかけて乱戦に持ち込んで人質を解放するとか、お約束のパターンがいくらでもあるじゃないですか。

実際問題、話の経過は、上記の作戦を採った場合とほぼ同じ流れになっています。単に、それが主人公達が意図した結果ではなく、偶然が積み重なってそうなっただけで。だとしたら、作戦の結果そうなる、と言う風に描いた方が、格好良いし盛り上がるわけで。この辺の拙さが、勿体ないことこの上ありません。

でもまあ、キャラクターとあいまった日常の暖かさは健在なので、最後まで問題無くプレイできそうです。小品として上手くまとまっている感じですね。



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