2010年04月02日

政府の委託調査って、こんなのばかりですか? 中国コピー事情

こんな記事がありまして。

日本アニメの中国海賊版被害2400億円 外務省推定

パッと見、凄まじい数字です。なんてひどい!中国ふざけんな!

……などと煽られて憤慨する前に、非常に大きな疑問が湧いてくるのは、私だけではないでしょう。

そもそも、アニメ市場自体がどの程度の大きさか?
これが、実は三千億円足らずです。

2006年 アニメ産業規模は2584億円 デジタルコンテンツ白書

日本の市場規模より巨大な「被害」って……?
何だこりゃと思いつつ記事内容を見ると、予想どおりひどい代物でした。


> 調査は民間シンクタンクに委託し、2009年12月18~25日に北京、上海、広州在住のアニメ愛好家計500人を対象にインターネットでアンケートを行った。
>
> 過去10年で日本アニメの関連商品にいくら使ったか聞いたところ、1人平均604元(約8千円)だった。中国では正規品の流通は極めて少ないため、この額を海賊版などに使った額と想定。アニメ愛好家の推計人数などをもとに中国全土での侵害額を算出した。



つまり、こう言う事です。
1,マニアを500人集めて消費額を聞いて平均値を出す
2,全土のマニアの数を考える
3,かけ算したら一丁上がり!
4,正規品の購入は一切無いものとして扱っております

どこのふざけたシンクタンクですか?こんな調査出してきたのは?
間違いなく外務省の外郭天下り団体だと思われるので、与党におかれましては、速攻で事業仕分けの対象として頂きたく。

しかもすごいのは、2の部分。
被害推計が2500億で一人当たりの消費が8千円ですので、なんと、中国には日本アニメのマニアが3000万人も居る事になります!視聴者じゃないですよ、マニアですよ。

4/3追記
コメント欄で、マニアの人数は150万程度と推計されているようだとの指摘がありました。ご参照下さい。
150万であれば、間違いなく過大ですが、そこまで酷くはないですね。

ちなみに、日本でアニメのDVDを定期的に買うようなマニアというのは、全国で十万いるかどうかのはずです。

何故か質問項目が「ここ最近10年」だったりする辺り、最初に2500億という「数値目標」を提示し、調査させたんじゃないかという小細工の臭いがプンプンしますね。

年800円で愛好家かよ、と言う部分については、こんなもんだと思いますよ。物価が違いますし、アニメはDVDを買い漁らない限り大きく金額を食いません。そして、正規のDVDはほぼ出回っていないわけで。むしろ、正規品がほとんど無い状況で、良く消費していると思います。
ついでに、10年間マニアを続ける人間は少数だと言う事にも留意。1年前からマニアなら、消費額は一年分になりますよね。

ちなみに、家計簿によると、私の去年の純粋な(例えば、派生ゲームや原作のノベルや漫画は含まない)アニメ関連支出は2万足らず。たまにキャラソングを買うくらいでしたからねえ。あと映画。関連CDも、メディアは邪魔なだけなので、iTunesに切り替えつつありますし。DVDを買わないと、多くの人はこんな物になるんじゃないかと思います。
本体が有料である書籍・漫画やゲームとは、わけが違うわけで。ちなみに、この三つは合計でアニメの数十倍。


最後に、一番重要な所ですが、正規品の流通がそもそも無いのであれば、そもそも上記の数値は「被害」ではないわけです。むしろ、ある程度お金を払ってくれる市場が存在するわけで、以前の記事で取り上げたような安価なサービスが商売として成立する余地があると言う事です。

この調査から読み取れるのは、中国ひでえではなく、中国に進出する余地がある、だと思うんですがねえ。

例えば、記事の最後は本当に笑止千万で、正規品の供給自体がないのに「海賊版や模倣品の違法性を認識し、購入を控え」る人間なんて、いるわけ無いじゃないですか。他に現実的な選択肢がないんですから。

勿論、コピー天国であるかの国に圧力をかけて行くのは当然。ですが、現実に存在する市場をどう取り込むか(海賊版から取り返すか)という話になれば、音楽業界に対してジョブスが言っていたとおり、価格や品質で競争していくしかないわけです。それで少しでも資金を回収できるようになれば、悲惨な業界への一助となるわけで。


児童ポルノに限らず、政府の調査結果は政策決定の軸になるわけなので、天下り法人に仕事をやるためにいい加減な事をされては、たまったものではありません。
結局、馬鹿ではないはずの(悪意は良く見ますが)官僚機構からおかしな政策が出てくるのは、下地となるデータがおかしいからだろうと思います。

まあ、一番救いがたいのは、旧日本軍のごとく、やりたい政策を実行するために現実認識をねじ曲げて都合の良いデータを作ってると言う場合ですが…… まあ、そう言うのは、そんなに多くはないと思いますよ。少ないとは、口が裂けても言いませんけどね。



子どもの最貧国・日本 (光文社新書)
子どもの最貧国・日本 (光文社新書)

調査やデータがいい加減なら突っ込む事もできますが、貧困のように「調査の必要は無い」とか言い張って完全に見ないふりを決め込まれると、もう民間ではどうしようもなくなったりします。






同じカテゴリー(アニメ・映像系)の記事画像
「HELLSING X 上映イベント」に行って来ました
アニメ PSYCHO-PASS #06 「狂王子の帰還」 感想
アニメ版「リトルバスターズ!」 第6話感想
アニメ PSYCHO-PASS #05 「誰も知らないあなたの顔」 感想
アニメ PSYCHO-PASS #04 「誰も知らないあなたの仮面」 感想
アニメ版「リトルバスターズ!」 第5話感想
同じカテゴリー(アニメ・映像系)の記事
 意志決定の機会を与えられない物語『この世界の片隅に』 感想 (2016-12-07 00:00)
 「作家性」とは歪さと見つけたり/『君の名は。』感想 (2016-09-08 00:00)
 面白いのが一番!『ゴーストバスターズ』リメイク版 感想 (2016-09-02 01:00)
 素晴らしい、そして欠点だらけの怪作 『シン・ゴジラ』感想 (2016-08-04 00:00)
 これはダメな映画では? 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想 (2015-07-10 00:00)
 酷いなこりゃ 映画版Steins;Gate 『負荷領域のデジャブ』 感想 (2013-05-02 00:00)

この記事へのコメント
こんにちは。この記事には私も疑問を持っていたので、たまたま通りすがって、興味深く読みました。大体同意なのですが、1点誤解されているところがあると思うので書き込みます。

>被害推計が2500億で一人当たりの消費が8千円ですので、なんと、中国には日本アニメのマニアが3000万人も居る事になります!

被害額は、中国での一人当たり8000円の海賊版購入が、正規品を買った場合の利益を想定して出しているはずなので、海賊版が300円、正規品が6000円とすると、この記事が想定する日本アニメのマニア数は150万人くらいでしょう。都市部の500人を調査しただけでどうしてこういう推定が出来るかはよく分かりませんが。
Posted by ねこま at 2010年04月03日 02:32
ねこまさん、はじめまして。

なるほど、そう言う計算なんですか。それなら確かに、マニアの人数は150万で済みますね。ご指摘ありがとうございました。追記しておきます。

ただそうなると、他の調査でおなじみの「海賊版がなければ全て正規版が購入されたはず」と言う、トンチキな前提で被害を計上してるんですね……
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年04月03日 11:10
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。