2010年04月12日

これが本当の難しいパターン フィクションと現実の混同



行政書士が示談「ドラマでもダメ」TBSに弁護士会抗議(朝日新聞)


結論を一言で:難しいよね


記事は、大阪弁護士会が行政書士事務所を舞台としたドラマに抗議した、と言う内容です。

まず前提として、弁護士会が間違った描写をしたテレビ局に抗議するのは、正当です。代表団体なわけですから、間違った情報については相手がドラマだろうがアニメだろうが、抗議すべきでしょう。対応する側のコストは、彼らが考えなくてはならない事ではありません。

同じ考え方で、私は例の宗教団体や自称女性の代表団体が、アニメや漫画を攻撃しているのも仕方ないと思っています。どんな酷い主張であれ、それは彼らが考えであって、ひどい事を理由に意見表明を制限するのはそう言う言論が野放しになるよりはるかに危険だからです。
それが、表現・言論の自由と言う事です。


ですから、ここで考えるべきは、公共性が非常に高いテレビが対応すべき事なのか、あるいはどのような規制があり得るかと言う事です。

とりあえず、この件に関しては、テレビ局には突っ込まれる要素が大きいでしょう。
行政書士と言うマイナー職を選んだと言う事は、一般人が普通知らない世界を舞台に、うんちくを交えて話を回す作品だと言う事です。そこで提示される「行政書士とはこう言う物です」と言う情報は、多くの視聴者にとって初めて触れる「事実」になります。
ですから、意図せずとも視聴者を「だます」恐れは大きくなります。

また、司法書士・行政書士・弁護士と言った、一般人から見て職掌がわかりにくい職業で誤った情報が流れてしまうと、営業妨害にも成りかねません。
今回問題になったのは示談交渉ですが、他のものについても本来弁護士事務所に相談に行くはずの人が他に行かれてしまう事が考えられます。勿論、完全に弁護士にしかできない内容なら問題は出ませんが、手段を変える事で代替されてしまう事もあったりします。従って、最初にどこの事務所に相談に行くか、は死活問題です。
この辺は、業界団体として当然に抗議するべきポイントになるでしょう。


TBSとしては、DVD販売自粛、などと言われても困ってしまうわけです。
ただ、後述しますが、「ちゃんと作ったつもりがミスをしていた」と言う話にも見えるので、それならば謝罪して該当する描写を削るなり編集するなりするのが正しいでしょう。きちんとした描写をするつもりだったのなら、むしろ指摘はありがたいはずです。

しかし、エピソードを面白くするため、または作品として考えてついたフィクションの嘘であれば、そう言うわけにはいきません。

あとは、誤解を与えるというマイナス面と(TBSとて、視聴者から文句を言われたくはないでしょう。例えば、「あんたの所のドラマ見て行政書士に相談に行ったら、ここじゃないって言われたぞ。時間の無駄をどうしてくれる!」とか)どう折り合いを付けるかです。
確かにドラマはフィクションですが、全部が嘘のフィクションなどありません。そして、テレビドラマというのは一般に、(アニメやゲームのようなサブカルチャーよりも)現実に近い物、作品に関係ない部分は事実で構成されている、という前提で見るものですから。

となると、これはもう冒頭と最後に「この作品はフィクションであり、作中の法律や業務内容については実際と異なる場合があります」と言うようなテロップを入れるのが、一番早いのではないかと思います。これならDVDでの追加も簡単ですし、視聴者もある程度納得するでしょう。

勿論、放送法で嘘を本当のように流すのは禁止されていますが、今回の件についてはそこまでではないでしょう。みのもんたのデマゴギーやプロジェクトX(http://artifact-jp.com/mt/archives/200306/projectxfiction.html)に比べれば、可愛いものです。


ただ、テレビの場合最初から最後まで通しで見る視聴者ばかりではないため、場面場面の描写に気を使わねばならない、と言うのは考えるべきかもしれません。冒頭やエンディングにテロップを入れても、見るのは何割か。
実際、月着陸捏造論の偽ドキュメンタリー番組が放映された時は、多くの人に信じられてしまったわけで。


閑話休題、内容に踏み込まれては放送局にとっても社会にとっても嬉しい事にはならないわけで、言い訳を用意する意味でもエロゲーのテロップなんかは、実に参考になるんじゃないかと思います。
まあ、あれだけ完璧な言い訳を用意しておきながら、味方を見捨てて土下座したソフ倫についての悪口は、もう繰り返しませんけれども。ただ、一点だけ。今回の都の騒動時まで、あそこがきちんと抗議を行っていれば、出版社や漫画家と肩を並べて活動する機会を得られたんですよ。それは、日陰者の業界が、表現者の一角として保護すべき対象と認められる可能性に繋がったはずなのです。チャタレイ事件の際に、エロ小説が文学の一部としてスクラムに加われたように。


ところで、TBSの対応がとても不可解なのが、一番気になった所です。朝日新聞が故意に曲解して記事を書いたのでない限り、相当酷いんですよ。

>TBSテレビ広報部の担当者は朝日新聞の取材に「番組の中で登場人物が行政書士と弁護士との業務の違いを指摘する場面が頻繁にあり、ホームページでも業務内容を紹介しているので誤解を受けるものではない」と話している。

作中での業務内容説明が重要なポイントとして上げられるのであれば、なおさら実際と違う物があってはいけません。別に職業物に限らず、ハードな宇宙物で作用反作用法則の解説が間違っているとか、歴史物で年号が間違っているとか、そう言うレベルです。

と言うか、一言で言うと、こう言うやりとりですよね?

弁護士会「説明が間違ってますよ」
TBS「説明をちゃんとしてます」

上に描いたように、ミスなら「ご指摘ありがとうございます」と謝っておけばいいし、意図があるならそう言えばいい。広報体制、大丈夫なんでしょうか?



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