2010年04月14日

明るく切なくゆったりと… 紺野キタ「つづきはまた明日」 感想

つづきはまた明日 1つづきはまた明日 1つづきはまた明日 2つづきはまた明日 2



「つづきはまた明日」は、前に感動して感想を書いた、「ひみつの階段」の作者、紺野キタの作品です。

内容としては、父子家庭(子どもは小学五年生と一年生)と、引っ越してきたお隣さん(両親と娘一人)の交流を描いた暖かな作風になります。

作者の他の作品と同様、大きな事件が起きるわけではない日常の中で、活き活きと暮らす子ども達と、時折混じる哀しみの描写が秀逸な良質の少女漫画です。

非常に巧みな点は、大人の視線の混ぜ方で、これが強すぎれば上から目線か童心主義か、どちらにしてもろくな物にはなりません。

この部分は、心はいつもヤングだと言ってはちゃめちゃな行動をしつつも、大人である事から逃れられない主人公の叔母さんが、上手くバランサーになっています。大人びているけど心が完全に子どもである主人公との対比が良いですね。そして、身も心も全力で幼児の妹が、うざくならないギリギリの線でリアルな子どもをやっているのもポイント。
この人物配置の巧みさは、一見一番標準的な大人に見えるお隣のお父さん(どう見ても受けキャラです本当にあr…)が、実はもっとも重い物を背負っていると言う所にも見られます。あのお父さんが一話限りの主役を張ったからこそ、丸々子どもの視点だけで構成されたような異色話「雨の日」で、読者は世界にすんなり引き込まれる事になるわけで。

ですから本作は、良くある「恋愛物を描いていた作者が、結婚した瞬間家族万歳!子ども万歳!だけの、つまらない作品しか作れなくなった」などと言うのとは違います。(BLOG主は、「男性作家にとって金持ちになる事と女性作家が結婚する事は、作家としての死亡フラグである」と言う偏見を持っています)


この雰囲気はどこかで憶えがあるなと思った所、全盛期の安孫子三和の作風に極めて近いですね。前回紹介した「秘密の階段」はタイムファンタジーでしたが、安孫子三和もこれを得意としていました。「真夜中をすぎても」シリーズ(番外編「月の船」で、世界自体がタイムファンタジーをやるために組まれている事が解ります。未完ですが……)や、「レイニー・デイ」(「みかん・絵日記」花とゆめCOMICS 第3巻収録。文庫版は、書誌情報が無く確認できず)など、短く焦点を絞って切れ味の良い良作を残しています。
過去形で語らなければならないのが、寂しい所ですが。


少女漫画家は創作者寿命が短い事が多いので、この作者の漫画も、一作一作を大切に読んでいきたいと思います。




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この記事へのコメント
以前、検索でアニメ会のライブレポ見てから、ちょくちょく拝見してます

>男性作家にとって金持ちに事と女性作家が結婚する事は、作家としての死亡フラグである

この辺、いずれエントリにしてもらえませんか
個人的には、幸せになってボルテージが下がってしまった作家ってのは、確かにいるなあと思うのですが、男性・女性に分けて考えたことはありませんでした
Posted by いせざき at 2010年04月14日 23:28
いせざきさん、はじめまして。

アニメ会ファンの方ですか。これからも、参加できたイベントのレポは上げさせてもらうつもりです。開催が東京なので、必ず参加できるとは限らないのが辛い所ですが。

引用箇所の法則(偏見)は、その内まとめてみたい所ですが、基本的に経験則なので、深い考察にはならないかもしれません。とりあえず、考えてみます。


なお、コメント欄で引用されてはじめて日本語がおかしくなっている事に気づいたので、その辺直しました。
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年04月15日 02:27
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